初夏になると咲きだす百合の花は、日本の自然でも見られる貴重な花の一つです。特に自生のササユリやヤマユリは数が減り、その美しさと貴重さが増しています。このブログでは、日本のユリの種類と花期、自生種と栽培種の撮影スポットを徹底解説します。ユリの撮影を考えているあなたにとって、役立つ情報が満載です。
ユリの種類
最初にユリの種類を紹介しますが、
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ユリは世界中で約110種が確認されており、そのうち日本には15種類が自生しています。多くの園芸品種が作出されている一方、野山で美しい花を咲かせる自生種も魅力的です。
サクユリ、ヤマユリ、ササユリ、オトメユリ、カノコユリ、テッポウユリ、タモトユリ、ウケユリ、エゾスカシユリ、イワトユリ、ヒメユリ、スゲユリ、オニユリ、コオニユリ、クルマユリの15種類ですが、この中で色分けした上記7種類が日本の固有種になっています。ウケユリも固有種に入れている説もありますが、ウケユリはササユリの変種と言う事で7種類にします。
日本にユリが持ち込まれたのは、江戸時代末期の1800年代中頃でした。そのきっかけは、ドイツ人医師・シーボルトなどが植物を調査する過程でした。彼らが日本から持ち帰ったカノコユリやヤマユリなどの球根は、その後、欧州で大きな注目を集めました。
特に、欧州で評価されていたテッポウユリを始め、ヤマユリ、カノコユリ、スカシユリなどの球根が人気を集め、生糸と並び日本の外貨獲得の手段となりました。世界中のユリの中でも、日本固有種のユリが、花の大きさや、花の咲き方などの点で、際立って美しかったことが理由と推測されます。
主な固有種
代表的な固有種の特徴を紹介します。
ヤマユリ
ユリの女王として知られるカサブランカに対して、ユリの王様とも呼ばれるヤマユリは、ユリの中でも大輪の花をつけ、白色の花弁の中に黄色の筋や濃い紅色の斑点が特徴です。開花までには五年ほどかかりますが、一度開花すると、その後は一輪ずつ花数が増えていきます。しかし、一つの株にたくさんの花をつけると茎が耐え切れず曲がってしまうことがあります。そのため、栽培種では添え木などで倒れないように支える必要があります。
ヤマユリは日本特産のユリで、北陸地方を除く本州の近畿以北の山地に分布しています。地域によってはヨシノユリ、エイザンユリ、ホウライジユリなどと呼ばれます。また、栽培種も多く、観賞用に栽培されたものが野生化している場所もあります。
早い所では6月中旬から咲き始め、暑い季節に元気に咲き誇ります。撮影をする際は、自生地を探していくか、栽培されている場所を訪れると良いでしょう。
ササユリ
ユリの中では早めに咲く種類で、5月の連休の頃にはツボミが膨らんでいるのが見られます。標高の高い山では6月下旬頃に咲き始めることもあります。
ヤマユリほど大きくはありませんが、茎に対して花は大きく開花します。そのため、開花後には細い茎が曲がってしまうことがあります。名前の通り、ササによく似ており、ツボミができるまではなかなか区別が難しいです。花の色は白と淡いピンク色があります。
自生のササユリは最近減少傾向にあり、準絶滅危惧種に指定されている県もあります。数年前までは山を歩き回れば比較的よく見られましたが、現在では見つけるのが難しい状況です。
テッポウユリ
地域によって異なりますが、テッポウユリは一般に5月から8月にかけて開花します。花はラッパに似た細長い形をしており、他の大輪の花のように大きく開くことはありません。タカサゴユリとよく似ていますが、テッポウユリは日本の固有種です。ただし、近年はタカサゴユリとの園芸交雑種が増えており、見分けがつかないこともあります。
一つの見分け方としては、タカサゴユリは8月以降も咲くことがありますので、その時期に咲いているものはタカサゴユリである可能性が高いです。また花弁に赤い筋が入っているとタカサゴユリです。しかし、交雑種も増えているため、確実な判断には専門家の助言が必要です。
カノコユリ
九州や中国地方など暖かい所に自生しています。別名タナバタユリともよばれ花期は7~9月です。白に赤色の鹿の子模様が特徴で、この色は離れていてもめだってみえます。
ヤマユリとともに品種改良用に海外で使われていて大輪の花を下向きに咲かせます。近年では自生種は数が少なくなっており絶滅危惧種とも言われている花です。
こちら東海地方では自生地は有りませんが、栽培種は結構見ることができます。
ヒメサユリ(オトメユリ)
ヒメサユリは東北地方南部から新潟県の山地に分布し、亜高山帯の草原という限られた場所でしか見られない希少なユリです。開花期は5月で、ササユリによく似たピンク色の花を咲かせます。
上の写真はササユリの画像ですが、ヒメサユリとササユリの違いは、オシベ(花粉をつける部分)の色でヒメサユリのオシベの花粉は鮮やかな黄色をしていますが、ササユリの場合はオレンジ色です。
自生地域が限られているため、ヒメサユリの自生種は数が少なくなっています。環境省のレッドリストでは準絶滅危惧とされており、保護が必要な種とされています。この貴重な花を見るためには、特定の地域を訪れる必要がありますが、その美しさは一見の価値があります。
サクユリ
サクユリは伊豆諸島にだけ自生する大輪のユリで、草丈や花径ともに世界最大のユリです。花期は7月で、草丈は2m、花径は30cmにもなります。
ヤマユリに似ていますが、見た目の違いは花弁に褐色の斑点がないことが特徴です。また、ヤマユリよりも大型であることも特徴の一つでヤマユリの花径は通常15〜20cm程度ですが、サクユリは30cmにも達する大きさがあります。
伊豆半島近辺で見られるものは、サクユリとヤマユリの両方の特徴を持ったものが確認されています、近年交雑が進んで見分けのつかない種類も出現しています。
自生のユリ
固有種ではないが日本に自生している種類のユリを紹介します。
ヒメユリ
スカシユリに似て上向きにオレンジ色にちかい赤色の花を咲かせます。山地で日当たりの良い草原を好みます。茎は直立し、高さは30 – 80cm程度となり花期は6月 – 7月。本州東北南部以南、四国、九州で自生しています。
自生の数はとても少なくて絶滅危惧種に指定されている県が多いです。こちら愛知県では野生絶滅で自生のものは見られません。
コオニユリ
コオニユリは7月から9月にかけて花を咲かせます。花弁が反り返り、オレンジ色の花を下向きにつけ一つの茎には2〜10個の花がつきます。
このユリは北海道から九州まで広く分布しています。外見はオニユリに似ていますが、根茎からはムカゴをつけずに種で増えます。一方、オニユリはムカゴをつけて増えるという違いがあります。また、オニユリは日本固有の種ではなく、史前帰化植物とされ、原産地は中国です。
日本の自生のコオニユリは絶滅危惧種に指定されていて現在見られるものは、栽培種が野生化したものである可能性が高いです。そのため非常に希少であり、保護が求められています。
スカシユリ
スカシユリは茎が直立し、上向きに花をつけるのが特徴です。太平洋側では7〜8月に、日本海側では5〜6月に花が咲きます。茎の頂に直径約10cm程度の、赤褐色の斑点を持つオレンジ色の花をつけます。
自生のスカシユリは主に山地や草原などの自然環境に生育していて鮮やかなオレンジ色をしていますが、ユリ園などで見られるカラフルな花は、アジアンティックハイブリッドと呼ばれる園芸種で白、赤、ピンク、オレンジ、黄色など、さまざまな色の花を咲かせます。
栽培種の種類
様々な分け方がありますがここでは大きく3系統に分けてみます。
自生種の系統
栽培種の前に日本の自生種のユリを主に次の3系統に分けてみます。
オリエンタルユリ
- ヤマユリ
- ササユリ
- カノコユリ
- オトメユリ
アジアンティックユリ
- スカシユリ
- ヒメユリ
- オニユリ
ロンギフローラムユリ
- テッポウユリ
- タカサゴユリ
栽培種の分類
自生種を元に交配してつくられた品種をハイブリッドと呼び大きく以下の3種類に分類されます。
ハイブリッド種 | 基になったユリの種類 | 特徴 |
オリエンタルハイブリッド (OH) | ヤマユリ、カノコユリ | 大輪が多く、カサブランカ、マルコポーロ、バルバレスコ、カスケードなど。 |
アジアンティックハイブリッド (AH) | スカシユリ、オニユリ | 赤、黄色、オレンジ色などカラフルな花が多い。スカシユリ(交雑種)、イワトユリなど。 |
ロンギフローラムハイブリッド (LH) | テッポウユリ、タカサゴユリ | テッポウユリの特徴を残した品種が含まれます。スノークイーンなど。 |
ユリの季節
種類によって大きく変わるユリの開花時期や見ごろを解説。
- スカシユリ系は、5月下旬から開花、6月下旬まで見頃が続きます。
- テッポウユリ系は、6月に開花、中旬~下旬に見頃を迎えます。
- オリエンタル系は、早咲きが6月から開花、7月中・下旬が見頃です。
ササユリなどの早咲きの種類は、5月中旬頃から咲き始め、6月上旬にはピークを迎えます。タカサゴユリは、温暖な気候であればほぼ年中見られます。厳冬期は少なくなりますが1~2月に咲いているのを見たことがあります。
地域によって開花時期は多少異なりますので、お近くの植物園や園芸店などに確認することをおすすめします。
自生のユリの撮影スポット
中部地方の自生のユリとその撮影スポット。
ササユリの自生地
グリーンピア春日井(都市緑化植物園)
東海地方でササユリを見ることができる場所の一つとして、春日井市にあるグリーンピア春日井(都市緑化植物園)周辺が挙げられます。
以前は、春日井グリーンピア周辺の築水池の周回路や少年自然の家近辺の遊歩道のなべつる湿地で多くのササユリが見られました。しかし、近年はその数が減少しており、周回路の見える場所でも1〜2輪程度しか見られなくなっています。
グリーンピア春日井内では、特に東の山との境目にある石垣の上にササユリが見られます。ササユリの開花は、グリーンピア春日井では5月中旬から5月下旬ごろが見ごろです。春の訪れとともに、美しいササユリの花を楽しむことができます。
富士見台高原
富士見台高原は、ヘブンスそのはらのロープウェイ山麓駅からリフトで展望台まで行き、そこからシャトルバスが運行しています。このシャトルバスは「神坂峠」を通り過ぎ、富士見台高原の山小屋「萬岳荘」まで行くルートです。片道所要時間は約20分、萬岳荘から富士見台高原までは徒歩40分ほどです。
2024年シャトルバスの運行期間は以下の通りです。
- 4月20日(土) ~ 5月12日(日)
- 7月13日(土) ~ 9月1日(日)
- 9月21日(土) ~ 11月10日(日)
富士見台高原では、特に7月中旬がササユリの見ごろとされています。自然が豊かな高原で、美しいササユリの花を楽しむことができます。
ヤマユリの自生地(一部植栽)
鳳来寺山
鳳来寺山は愛知県新城市にある山で、ヤマユリの名所として知られています。毎年7月中旬頃にヤマユリが見頃を迎え、参道や登山道沿いに多くの花が咲き誇ります。
- 見頃時期
7月中旬~下旬、天候や気温によって多少前後する場合があります。 - 見どころ
鳳来寺山参道、参道沿いに約1万株のヤマユリが咲き誇ります。
青少年の家周辺ではササユリとヤマユリの両方を山頂付近、奥の院周辺は山全体でヤマユリを楽しめます。 - アクセス
JR飯田線新城駅からバスで約40分。東名高速道路豊川インターチェンジから約1時間。 - 駐車場
鳳来寺駐車場:無料、約200台駐車可能
新城市青年の家、奥の院周辺などに駐車場があります。
鳳来寺山のヤマユリは、毎年多くの観光客が訪れる人気スポットです。登山道は整備されていますが、歩きやすい靴で行くことをおすすめします。ヤマユリは採取が禁止されています、写真や見て楽しみましょう。
アクアトト(木曽川水園)
木曽川水園では、ヤマユリが自生しているわけではありませんが、一部にまとめて植栽がされており、見事な花を楽しむことができます。自生のものよりも早く、6月下旬から7月初旬に開花が見られます。
つり橋を渡った場所の通路の両側でみられます。開花期になると周りに香りが漂っています。
ユリ(栽培種)の名所と情報
中部地区、栽培種のユリの名所とその詳細の情報の紹介をします
。
可睡ユリの園
可睡ユリの園は、静岡県袋井市にあるユリ園です。3万坪の園内には、早咲き5月から遅咲き7月までさまざまな種類のユリが咲き誇り、毎年多くの観光客が訪れます。
- 開園期間 2024年5月25日(土)~ 7月7日(日)
- 開園時間 9:00 ~ 17:00
- 入園料金
大人(高校生以上)1,100円(通常:5月25日~5月31日・6月21日~7月7日)1,500円(最盛期:6月1日~6月20日)
小・中学生 400円(通常・最盛期共通)
幼児 無料 - 駐車料金 500円(乗用車)
- 公式サイト http://yurien.jp/guide/
千種公園(名古屋市)
5月下旬から6月中旬ごろにかけて毎年、約16種類、約1万株の花が見られます。
名古屋の市街地にあるので、交通の便は良く一般の公園なので入園料や開園の時間など気にせずに行けます。
公式サイト https://www.oshimazoen.co.jp/park_management/chikusa_park.html
ゆりの里公園(福井県)
ユリの里公園は、福井県坂井市にある公園です。約15万株のユリが咲き誇るユリの名所として知られています。夜間はライトアップも行われ、幻想的な雰囲気を味わえます。
- 見頃 6月上旬~6月下旬
- 営業時間 9:00~21:30
- 休園日 火曜日(ゆりフェスタ開催中は休園日なし)
- 入園料 無料
- 公式サイト https://yurinosato.com/
- ユリフェスタ 6月1日(土)~6月30日(日)
ユリの 撮影方法
花の中でも大きく撮りやすいユリは、同時に単調な撮影になりがちです。以下の事に注意して変化のある写真を撮ってみましょう。
光と影の活用
ユリの撮影では、ユリの独特な色と形を出すために光と影を上手に活用することが重要です。逆光や斜光線で単調な光では出せない立体感を出します。
直射日光の回避
直射日光が当たるとハイライトの部分でディテールが失われることがあります。順光で当たる直射日光は避けましょう。日陰や曇りの日は柔らかな表現ができますがこれも立体感を損なわれることが多いので花の見栄えの良さと同時に入ってくる光の角度も考えましょう。
写真のように晴天日中の木陰は、コントラストが強すぎるので、影の部分は補助光が必要になります、レフ板やストロボの使用などを考えましょう。
背景の調整
花を引きたたせるには、ゴチャゴチャとした余計な背景を入れず写真のように思い切って真っ黒にしてしまっても良いでしょう。
木漏れ日などを利用して絞りを調整して玉ボケを取り入れると、花が美しく際立って見えます。玉ボケも大きさや数など絞りを変えて調整して花の邪魔にならないように気をつけましょう。
構図とアングル
構図とアングルは他の花とちょっと違った撮影になる場合があります。
種類で変えるアングル
オリエンタル系のユリは花も大きくうつむき加減に咲くことが多いため、下からの撮影が多くなります。
スカシユリなどはほぼ上向きに咲きますので、横からの撮影で複数の花を撮ると立体感も出やすいです。少し上から花芯まで見えるアングルも面白いでしょう。
テッポウユリは、正面から撮ると特徴のある細長い形が分かりませんので横から撮るなど長さを強調したいところです。
中心配置を避ける
真ん中に配置するとなじみが良く見えますが、葉などを入れて中心から少し外してみると変化がつけられます。写真のように縦位置で上下に花を配置して後ろの花をボカすと遠近感も出ます。
斜めからの撮影
写真のように真正面から撮ると立体感もなくフォルムも分かりにくくなるため、少し角度をつけて斜めから撮る方が良い結果がでます。
ピントと絞り
ピント合わせ
花の撮影では、メシベにピントを合わせることが基本ですが、時には花弁の一部や手前のオシベなど、魅力的な部分にピントを合わせることも大切です。
多くの花がある場合は、欲張らずに主題に決めた花にピントを合わせましょう、他の花はボケてもかまいません。
今はほとんどがデジタルのカメラなので撮影したら拡大して確認することを強くお勧めします。簡単に撮影に行ける場所ならよいのですが、家に帰ってから拡大してみてピントが合ってなかったということもよくあることです。
絞りの調整
絞りを開き気味にすることで柔らかな表現ができます。また、広角系のレンズを使う場合は、絞りを絞ってすべてにピントが合ったパンフォーカスで、マクロレンズや望遠レンズの場合は開放に近くすることでボケを生かした表現ができます。プレビューボタンを活用するとその時に選んだ絞りでボケの確認ができます。
編集ソフトの活用
ユリの撮影は色が非常に重要になります。できることならRAWで撮影して後でホワイトバランスやコントラストなどを調整することで、別物にみえるほどかわることもあります。現場ではカメラの設定よりも撮影のほうに専念したいですね。
難しいレタッチなどを行わなくても、今はAIによるレタッチも手軽にできるようになっています。
まとめ
春から秋まで見られるユリの花の撮影やスポットを紹介しましたが、近年、自生するユリの数は減少しており、その貴重さが増しています。自生のユリは栽培種とは異なり、派手さはありませんが、自然の中で咲く姿には独特の魅力があります。
そこで、今回の記事では、自生のユリが咲いているスポットも紹介しました。自生のユリを見たことがない方は、ぜひ参考にして探してみてください。自生のユリが咲く場所を訪れることで、自然の美しさや豊かさを感じることができるでしょう。ユリの花畑に囲まれた風景は、心を癒し、新たな発見や感動を与えてくれることでしょう。
四季の花はこちらから↓