スズランの美しさにひかれ、写真撮影に挑戦する方も多いのではないでしょうか?
スズランの撮影で検索してみると、参考写真などは数多く出てくるのですが撮影方法など詳しく解説したものがあまり見当たりません。実は意外に簡単に撮れそうでなかなか絵にならないのがスズランの花の難しさなのです。ただ、2~3点気を付けるだけで可憐な姿やその魅力を十分に引き出すことができます。
本記事では、私が10年以上撮りためてきたスズランの写真から美しく撮影するための撮影法やこれから見頃を迎える名所の情報をお伝えします。
スズランの魅力を探る
スズランの花言葉や由来について紹介
スズランは、キジカクシ科スズラン亜科スズラン属に属する多年草の一種で、日本では春から初夏にかけて咲く代表的な花のひとつです。スズランの花言葉は「高潔」「清純」「愛らしさ」「幸福の訪れ」などであり、春の深まりとともに心を和ませてくれます。
ミュゲの日について
フランスで毎年5月1日に祝われる「ミュゲの日」は、家族や友人、愛する人に感謝や思いを込めてミュゲを贈り合う伝統行事です。ミュゲとはスズランのことを指し、この伝統は1561年にフランスのシャルル9世が美しい女性からミュゲを贈られたことから始まりました。彼はその幸せを分けてあげようと宮中の女性すべてにミュゲを贈ったとされています。
スズランの開花日や花の特徴
スズランは北海道を代表する花の1つで、日本在来種は東北や北海道の高地に多く自生していて、開花時期は5~6月。本州の街中では4月から咲き始めます。
下向きにベルのような小さな花を幾つもつけ、色は白色やピンクも有ります。
日本スズランとドイツスズランの違い
よく栽培されているほとんどがヨーロッパ原産のドイツスズランで、日本に自生するスズランと比べると大型で花の香りが強く、花茎が葉と同じ長さかそれ以上に伸びることで見分けがつけられます。
日本スズランはドイツスズランより小さめで葉よりも低い位置に花をつけることが多く葉の影に隠れてひっそりと咲くことから「君影草」の別名がつけられています。
もう一つの違いは、花を下からのぞくと、赤い色が見える(写真左)のがドイツスズランで白色のまま(写真右)が日本スズランです。
スズラン撮影の装備と技術
絞りやシャッタースピードの設定
- 晴れた日は、白の花色が露出オーバーになりがちなので白飛びに注意して撮影。周りが暗く感じるくらいの露出で花に対しては適正になります。
- 風のある日は、花も揺れることが多いのでシャッタースピードは速めにしないとぶれてしまいます。
- 花の背が低いので逆光で撮影する場面はあまりないかもしれませんがあえて補正せずにシルエットにしても面白い表現ができます。
撮影時の注意点やポイント
- 三脚は、スズランの群生を広角でとらえる時には使用しますが花に寄って撮る場合は低位置ですのであまり使えないでしょう。
- 群生地などで規制がなく花に近づける場所では撮影に夢中になって花など踏まないように足元に注意が必要です。
スズランを美しく撮影するテクニック
スズランは、その独特の形状や美しい白色が他の花とは異なる特徴を持っています。この特徴を生かすことで、スズランの美しさや魅力をさらに引き出すことができます。
スズランの撮影における構図や角度、背景の選び方
葉っぱの配置
スズランの撮影では、他の花とは違って、葉っぱが非常に重要な役割を果たします。葉っぱを使った構図や前後に配置することで生じるボケは、スズランの撮影においては必ず現れるものであり、花を美しく撮るために効果的に活用することが大切です。
作例をあげて解説していきます。
葉っぱで挟み込むように真ん中に花を配置。左右対称でもおかしくはありませんが、少し変化があったほうがバランスよくおさまります。
片方に葉っぱを寄せて反対側に花を配置。半分くらい葉っぱを入れてもピントが花に行っていれば違和感もなくみえます。
葉っぱを色だけのボケで利用。絞りを開いて花に近づくと効果も高くなります、マクロレンズがオススメです。
葉っぱに写った花のシルエットを撮る。日本スズランの場合ほとんど葉に隠れてしまうことが多いのでこんな感じで狙ってみるのもおもしろくなります、形でスズランとわかるのも他に花にない特徴なのでシルエットでも効果があります。
葉っぱの隙間をうまく活用するアングルや構図を考えることが大切です。
群生地での注意
低位置からが増えると思いますので、邪魔にならなければレジャーマットなどで座ったり伏せた状態で撮りたいものですが人出が多いと難しいです。
カメラは液晶がチルトやバリアングルが有ると地面にスレスレからでも撮れるので便利ですね。
色を考えて撮る
白色と緑がメインになってきます。色の対比としてはその2色でもかなり見栄えの良い写真が撮れますが、背景に他の花の色などを入れても変化が出て面白い写真ができます。
写真は咲く時期が一緒のツツジを背景に入れてみました。色だけにしてボカしたほうが煩雑にならずにすみます。
花に注目して撮る
一つの花茎を撮るには横からのアングルが、花が整ってきれいにみえます。ただし葉っぱなどアクセントがないと単調な画像になってしまいます。
花数の多い場所を撮る時は、狙った花以外は絞りを開いてボカしたほうがみやすくなります。
アングルを工夫して撮る
スマホやコンパクトデジタルカメラを使うと真下からノールック撮影(ファインダーや液晶を見ずに撮影)で日頃見慣れないアングルからも撮る事ができます。ただし、背景がうるさくなりがちなので、青空など単純な背景で撮りたいです。
スズランはうつむいた状態で花をつけるため花芯を撮るのが難しい花ですけれどノールック撮影をすると、下から花芯を撮影することもがきます。花の重なり方などで横向きに咲いているものもありますので、見かけたら花芯の撮影をしておくとよいでしょう。
マクロレンズを使ったスズランの接写撮影
花の姿が非常に個性的でかわいいので、マクロレンズで近寄って撮るというのもオススメです。
花が丸くカーブしているので、寄りすぎるとどこか1点しかピントが合わず全体的にピンボケにみえてしまいます。写真は芯の茎の部分に合わせてみました。花弁のカールの先端にあわせてもまた違った表現ができます。
雨降り後の水滴もマクロレンズで撮りたい場面です。映り込みなどがある場合は水滴よりも中の写った物にピントを合わせましょう。
マクロレンズのボケやすい特性を生かして雨あがりのキラキラ輝く水滴を玉ボケにして撮る事ができます。玉ボケは絞りを開いたり、花に近づいたりすることで大きさをコントロールします。
スズランは開いた花もかわいいのですが、たまごのようなつぼみもまた花と一緒に撮っておきたいところです。
風景写真としてのスズラン撮影
スズランの名所などで風景の一部として撮影するのは、けっこう難しくなります。なぜなら葉っぱでほとんど花が隠れてしまってヒマワリやチューリップのように花が目立たないからです。広角で花に近寄って撮るようにしましょう。
群生地以外の花壇や鉢植えで撮影
背の高い花壇や鉢植えでは、群生地とはちょっと違った撮り方もできます。
- 地面より下のアングルから撮る事ができます。
- 鉢植えは移動できるので背景を変えたり照明をくわえたりできます。照明があれば時間に縛られず夜でも撮影が可能。
スズランの写真を楽しむ
撮った写真の編集
スズランの花の純白の色というのは、なかなか出てこない色でもあります。青空や葉っぱの色かぶりなどがあって微妙に色がついてくるのです。
RAWで撮っておくと現像時に色かぶりなどを取り除いて純白に近く仕上げることができます。左がJPEGそのままで右が色かぶりを取り除いて編集したものです。
アルバムやフォトブックを活用
写真は大きく伸ばして家に飾ったりアルバムに保存しても楽しめます。オススメはフォトブック作成。スズランだけじゃなく季節ごとにまとめた花などを使って作ると自分の写真の整理もでき一石二鳥です。
フォトブック作成はこちら、
全国のスズランの名所
北海道(平取町)
北海道沙流郡平取町字芽生
約15ヘクタール、東京ドームおよそ3個分
一般公開は毎年5月下旬~6月中旬
北海道(札幌市)
北海道札幌市南区滝野247
見ごろは、5月中旬~6月上旬
北海道で唯一の国営公園で5万株
長野県
長野県諏訪郡富士見町富士見
見ごろ5月下旬から6月下旬
入笠すずらん山野草公園には約20万本のドイツスズラン、入笠湿原では日本スズラン100万本
5月下旬から6月中旬にかけての例年の見ごろに合わせて「120万本のすずらん祭り」を開催
山梨県
山梨県笛吹市芦川町上芦川
見ごろ5月中旬頃から6月上旬
約260万本の日本スズランが群生、山梨県の自然記念物
岐阜県
岐阜県高山市朝日町甲
約1万3千株
見ごろ5月中旬〜下旬
奈良県
奈良市都祁吐山町
見ごろ5月末から6月初旬
スズランが自生する南限地、国指定天然記念物
広島県
広島県世羅郡世羅町青近
見ごろ5月下旬~6月中旬
県の天然記念物、奈良の吐山と同緯度にあるのでスズランが自生する南限
熊本県
熊本県阿蘇市波野大字新波野1372
見ごろ5月中旬~6月上旬
自生のスズランが九州で見られるのは珍しい
標高800m約5万株
まとめ
群生地など行ったことがない方が初めて現地で見て驚くのはスズランの花の背が低いことでしょう、特に日本スズランはほとんど葉に隠れてどこを見ても葉しか見えないという状態なので、写真はかなり撮りにくいです。
ただ、1つ1つの花に寄って見るとその可憐さや整った姿が見えてきて思わず写真に撮りたくなります。
皆さんもスズランの美しさをカメラに収める際には、ぜひ記事中で紹介したポイントを参考にしてみてください。スズランの花のはかなさや美しさを、素晴らしい写真に残してみましょう。