アジサイは日本の梅雨の季節に咲く美しい花です。色とりどりの花びらが雨にぬれて輝く姿は、多くの写真家やカメラマンを魅了しています。しかし、アジサイの撮影は簡単ではありません。雨や曇りの日が多く、光の具合や背景の選び方に工夫が必要です。また、アジサイは人気の被写体なので、混雑やマナーも気になるところです。そこで、この記事では、アジサイの魅力を引き出す撮影方法とこちらの地元愛知の名所について紹介します。
アジサイの種類
アジサイの撮影法の前に花の種類や特徴を知っておきましょう。非常に種類の多いアジサイは、それぞれに個性的な魅力を持っていますのでそれに似合った撮影をしなければ魅力を引き出すことができません。
日本原産のアジサイ
アジサイの花は日本の固有種でヤマアジサイ、ガクアジサイ、エゾアジサイなどがあります。西洋アジサイはすべて日本のアジサイからつくられたものです。
ヤマアジサイは、西洋アジサイよりも開花が1~2週間早くガクアジサイに似ていますがひとまわり小さな花です。
タマアジサイはつぼみが丸い玉のようになっていて装飾花はガクアジサイに似ています。
コアジサイはガクアジサイの装飾花が無くなったような造りで白に近い淡い紫色の花をつけます。
シーボルトとアジサイ
江戸時代末期から幕末にかけて日本に滞在したオランダ人医師、シーボルトは、日本の植物に魅了され、多くの植物をヨーロッパに持ち帰りました。彼はその後、アジサイの品種改良に取り組み、西洋アジサイの元となる品種を作り出しました。
アジサイは、彼の特別な愛情を受けた植物の一つであり、日本人の妻お滝への愛を込めて、彼女の愛称「オタクサ」(Hydrangea otaksa)を学名に用いたとされています。しかしアジサイの学名はシーボルトが命名する以前に「Hydrangea macrophylla」という名前で発表されていたため、オタクサの名前は正式には認められませんでした。
幻のアジサイ
シーボルトが「日本植物誌」に記載したヤマアジサイの変種であるシチダンカは、後年、見ることができずにいましたが、1959年に六甲山系内で再発見されました。この花は装飾花が八重咲きで、各がく片が剣状にとがり重なって星状になる特徴があります。
外来種のアジサイ
装飾花が玉のような形になったセイヨウアジサイはガクアジサイが西洋に渡り、品種改良を重ねられできたものとされています。
新しい品種のアジサイ
最近は毎年新種が出ていて、園芸種は数えきれない種類があります。梅雨時だけじゃなく暑さに強い品種もつくられています。
ダンスパーティ・八重咲の細めの花が輪になって踊っているように見えます。
アナベル・普通のアジサイより小さめの花が集まって丸い形の花姿です。白とピンクがあり色によって趣も違って見えます。
墨田の花火・花茎が長く空に広がる花火をイメージさせます。
テマリピンク・淡いピンク色一色の八重咲のアジサイ。フラワーギフトなどにも使われます。
ウズアジサイ(オタフク)・がく片がへこんでうず状になっておたふく豆に似ていることからつけられた名前です。
アジサイに似た花
西洋カンボク、オオデマリ、ヤブデマリなどは似ていますが科が違っています。
クサアジサイは山地の木陰や湿った林床などで咲き花はアジサイによく似た咲き方をします。アジサイ科ですが属が違ってどちらかといえば山野草に近いあつかいです。
アジサイの特徴
アジサイの属名のハイドランジア(Hydrangea)は、古代ギリシャ語で「水」と「器 」を意味すると言われ梅雨時に咲く花の代表 になっています。
花の形や大きさ
ガクアジサイや西洋アジサイがありますが、基本の造りは花弁に見える装飾花があって別で本物の花があります。本物の花の位置は花芯であったり装飾花に囲まれた中などさまざまです。また、コアジサイのように装飾花がない物もあります。
花びらの色の違い
アジサイの花色はアントシアニン系色素が作用しているため、土壌中のアルミニウムが吸収され、色素と結合して青色に発色します。逆にアルミニウムが吸収されないと、ピンク色に発色します。アルミニウムは酸性土壌でよく溶け、アルカリ土壌では溶けにくいため、土壌を酸性にすれば青い花になり、中性~弱アルカリ性の土壌ではピンク色の花になります。ただし、中には例外もあるようです。
アジサイの撮影の基本
アジサイ撮影の基本の撮影を解説。
光や影の扱い方
アジサイの撮影において、光と影の扱いは重要です。まず、直射日光は避けるようにしましょう。直射日光は花びらに白飛びを生じさせたり、花の色味を変えたりする可能性があります。また、明るすぎる場所で撮影すると、花の細部のディテールが失われ輪郭だけになってしまうことがあります。
アジサイの花は、陰影を生かすことで美しく見せることができます。花の一部に影がかかっている場合は、花全体を明るくするのではなく、その陰影を生かして花びらの立体感を出すと、花の美しさがより際立ちます。
曇りの日は花の色がきれいに写りますが、立体感は少し物足りない感じになるので補助光など使って影をつくると立体感のある撮影ができます。
背景の選び方
アジサイを撮る場合の背景には、アジサイの美しさを引き立てるために、シンプルで自然な背景がオススメです。背景が複雑だと、アジサイの美しさが目立たなくなってしまいます。
淡い花の色の場合は、暗めの背景を選ぶと花が引き立って見えます。
花が紫色や青色の場合は、背景に赤みのある色やピンク色を選ぶと、花の色が引き立ちます。逆に、ピンク色のアジサイの場合は、背景に青みのある色を選ぶと、花の色が引き立ちます。
アジサイ撮影の構図
植栽された場所を撮る時は花を斜めに配置すると流れや動きが表現できます。
装飾花がバランスよく並んでいるアングルを探しましょう。
1株を単独で撮る場合は、単調になりやすいので背景などに工夫が必要です。
背の高い花は裏から透かして撮るということもできます。露出に注意しないとシルエットになってしまいます。
アジサイをさらに美しく撮影する方法
細かな所に注注意することで更に美しく撮影できます。
ピントの位置を考える
花が多いと目移りしてあれもこれも入れて撮りたくなりますが、主題をどの花にするか決めてピントを合わせましょう。
ボケを活用する
前ボケを使う場合は、できるだけ形が分からないくらいボカしたほうがみた目もよくなります、中途半端や前ボケの色が濃すぎると写真のように主題より手前のボケの方に目がいってしまいます。
後ろのボケは、丸い形のアジサイの場合それほど絞りを開かなくても程よく丸い形にボケてくれます。
玉ボケは、花との距離や絞りによって変わりますので、PVボタンなど活用して確認しながら撮影をしましょう。
雨の日のアジサイの撮影
アジサイの花は雨がよく似合う花なので雨が明けた後や水やりの後で水滴が残った状態を撮ると花もいきいきしてみえます。
ただし、雨降りの日は暗くなりがちで花の色もさえないので難しいです。カメラもぬれないようにレインカバーなどで保護する必要があります。
視線を変えて水たまりに写ったアジサイを撮ってみると面白い表現ができます。
朝夕のアジサイの撮影
朝早く前日の露が残っているときには、水滴が光に反射して輝くところが撮れます。夕方は色温度も低くなって赤い花はより赤っぽくみえるでしょう。どちらも斜光線になるので、立体感のある写真ができます。
朝夕は周りも暗くなって葉の隙間から入ってくる光を利用すると、スポットライトを浴びたようなドラマチックな一枚が撮れます。
マクロ撮影でアジサイを表現する
私は、90㎜の中望遠のマクロレンズで撮る事が多く、少し引いて撮った写真や、芯の小さな花、または、水滴のアップなどほぼレンズ一本でたりてしまうくらいです。
遠景(中望遠)・90㎜の画角はポートレートにも最適、人を撮る感じで花を撮影。
接写(マクロ)・等倍の写真で花の細かなところまで描写。
超接写(スーパーマクロ)・ マクロから更にトリミングして水滴などを拡大撮影。
葉っぱも活用する
アジサイの花の色はどちらかというとパステル調が多く、少し眠たい感じの表現になりがちですが、濃い目の緑の葉を入れることで写真が締まってみえます。
人工物を利用
垣根なども利用して撮ると花だけと違ってオシャレな感じが出せます。西洋アジサイも和の雰囲気に見えますね。
アジサイ写真のレタッチ
撮影後のレタッチも、作品作りに必要です。
RAWでの現像
アジサイの花の微妙な色合いは写真で出すのが難しく、RAWでの現像、レタッチが大変便利です。
ホワイトバランスや色温度も現像時に変えられるので全く雰囲気が違う写真に仕上げることができます。
同じRAWから作った写真ですが右左でまったく違った雰囲気の写真ができます。私はいつもオートホワイトバランスで撮影してRAW現像で調整しています。
間違い探しのような写真の比較ですが、前後をボカした写真で左は、花とともに左下にピントが合った葉が写りこんでいます。そちらに目線が行ってしまうので消去した画像が右です、目線が花におさまりますね。
ハイキーとローキー
ハイキーの場合は、明るく動きのある洋の雰囲気で、逆にローキーになるとしっとりと落ち着きがある和の雰囲気が出せます。
アジサイのおすすめスポット(愛知)
2024年中部地区のアジサイ祭り。
稲沢アジサイ祭り
大塚性海寺歴史公園・性海寺(愛知県稲沢市大塚南1-33)
アジサイ祭り 2024年6月1日(土)~6月16日(日)
午前10時~午後4時
境内には、本堂をはじめ多宝搭、宝塔など、貴重な文化財が多く残されています。90種類1万株のアジサイが見られます。
本光寺紫陽花まつり
本光寺(愛知県額田郡幸田町大字深溝字内山17)
本光寺紫陽花まつり 2024年6月1日~6月30日
見頃は6月上旬~7月上旬
本光寺は、深溝松平家の菩提寺で「三河のあじさい寺」として知られており、境内や参道には約1万本の紫陽花がみられます。
まとめ
アジサイは、5月下旬のヤマアジサイから、遅咲きのアジサイが見ごろを過ぎる6月の下旬まで、梅雨の風景を明るく彩ってくれる花です。その七変化と言われる色は、一カ月ほどの間にさまざまに変わっていきます。雨が多く、撮影のタイミングを合わせるのは難しいかもしれませんが、本記事では、小雨から晴天まで対応が可能な撮影法を紹介しています。ぜひ、その場に応じて活用してください。
花のレタッチや加工については、別の記事で詳しく解説する予定です。アジサイの美しさを引き出す方法について、ぜひ参考にしてください。
四季の花写真はこちら↓