鮮やかな花弁がひねりながら咲く野生ラン、ネジバナ。その独特の美しさとはかなさに魅了される人々は少なくありません。ネジバナは、まるで踊り子が舞うような姿勢で花を咲かせることから、「踊り子の花」とも呼ばれています。この野生ランの魅力を最大限に引き出すためには、撮影にもちょっと工夫がいります。
私は10年以上、毎年ネジバナの咲く時期に写真を撮りためています。かわいい踊り子のような姿は毎年撮っても飽きないものです。
この記事では、特に初心者のカメラ愛好家に向けて、ネジバナの撮影に役立つ情報を提供します。さあ、一緒にネジバナの花が奏でる美しい踊りを追い求め、感動的な写真を撮影しましょう。
ネジバナの魅力に迫る
ネジバナはラン科ネジバナ属で野生の原種のランです。別名モジズリとも呼ばれています。その美しい花びらの形状と鮮やかな紫色が特徴で、小さな花が集まって咲く姿は、まるで星のように輝きます。その季節限定の美しさと、梅雨の前後に現れる意外性が、ネジバナの魅力を一層引き立てています。
ネジバナの独特な花弁の形状と色彩
独特のひねった茎から咲くネジバナの花は、右巻きや左巻き、まっすぐなど、さまざまな形状を持ち、その美しい花弁の色彩も幅広いバリエーションがあります。茎のねじれ具合によって、咲く花の形や向きが変わり、見る角度や距離によっても異なる魅力が現れます。ピンク色が濃い目の花から白に近い色まで、色彩の変化も豊かであり、その一つ一つがまるで芸術作品のように見えるのです。ネジバナの花弁の形状と色彩の多様性は、撮影する際にも魅力的な要素です。
野生ランとしての生育環境の特徴
ネジバナは、一般的には芝生などでよく見られますが、他のランと同様に栽培は難しい花です。野生のランの種子はとても小さく、菌根菌という菌が栄養分を与えないと成長しないため、同じ場所で毎年咲くものの、土の環境の変化で、咲かなくなることもあります。
ネジバナは山野草としても販売され、愛好家によって鉢植えで育てられていることも多いです。
幸いこちらでは毎年見られるネジバナの生育場所が多く存在しますので、それを生かして撮影に適した条件を考えてみたいと思います。
ネジバナ撮影の基本テクニック
ネジバナの美しさを引き出すための撮影法をご紹介します。適切な撮影機材の選び方や光のコントロール、花のディテールを引き立てるアングルの選択など、撮影のポイントを解説します。ネジバナの独特な姿勢や色彩を捉えるためのテクニックを学び、魅力的な写真を撮影しましょう。
適切な撮影機材の選び方
カメラは、特にこだわる必要はありません、一眼でもコンデジでもスマホでも撮る事ができます。特にマクロ撮影ができる機能を持ったカメラがオススメです。
ほぼ低位置からの撮影になりますので三脚の出番は少なくなります。
花のディテールを引き立てる
マクロレンズで等倍やトリミングしてそれ以上に寄って見ると、小さくても確かにランという花の顔がみえて来ます。
花全体よりもそれぞれの花の細かなディテールを意識して撮影するとよりネジバナの魅力が引き出せます。
背景の選び方
ネジバナの撮影のポイントとして、背景は複雑にせずできれば緑や青など単色の方が花が引き立って見えます。あまり背景が複雑な場合は絞りを開いてボカしてしまいましょう。
花の本数と縦位置、横位置
花一本を撮るならシッカリ寄って撮りましょう。
群生を撮る場合は広角(標準)と望遠二種類の撮り方があります。
広角(標準)レンズで近づいて撮る、この場合シッカリ寄らないと余分なものが入ってしまいます。
望遠レンズ(300㎜)で密になっている場所を切り取って圧縮効果を出す。
ネジバナはその形状からつい縦位置を選ぶことが多くなります。
横位置で撮る場合は写真のように真ん中に一本だけ配置すると左右があいてしまってバランスが悪いのでどちらかに寄せて背景を工夫します。
光のコントロール
順光の場合は色はきれいに出ますが、立体感が損なわれる時もありますので半逆光で花の透明感と立体感を出すとよりきれいにみえます。完全に逆光でシルエットにするのは形も分かりにくい花なのでオススメしません。
花自体は白い所が多くかなり明るく写る素材になりますので引いて撮る場合は、背景を暗めにすると花が輝いて見えます。
アップで花を撮る場合は、白っぽい部分が飛んでしまわないように注意が必要です。
花が一番きれいにみえる光は、背景などでも変わってきますがどんな光が似合うのか一周回って観察してみることが大切です、その場合必ずファインダーをのぞくかモニターで確認することです、肉眼とはかなりみえ方が違ってきますから。
ピントの位置の調整
ピントは花が真っすぐ上に伸びているわけではないので、拡大して撮りたい花の部分を決めて合わせましょう。
チョウや虫などを入れる場合は、花とどちらがメインになるのか考えて構図、アングル、ピントの位置を決めましょう。
ネジバナのようにひねった花を撮る場合、前後の花に合わせるのか、左右の花に合わせるのかで表現も変わってきます。
一眼では撮れないスマホのアングル
スマホの場合、一眼やコンデジでは撮りにくいアングルなどから撮れます、モニターを見ずに真下からの撮影というのも変わった視点で面白いものです。
また逆に上から下向きに撮っても並びが面白くボケの効果も出てきます。
玉ボケや水滴を撮る
背景に水たまりや、草についた水滴がある場合、マクロや望遠レンズで撮ると玉ボケができます。
花自体には水滴がつきにくいのですが、雨あがりに行くと水滴が残った状態も見られます。
ネジバナの踊り子のような姿を捉えるコツ
ネジバナは他の花にない独特の魅力を持った花です。その特徴を引き出してみましょう。
巻いているリズムをとらえる
一本ずつすべて違っているというくらい 個性的な巻き方が多いです。細かくまいていたり、大きくまいていたり、またまっすぐになっていたりとそれぞれに違った踊り子さんがみえます。
群生を撮って背景にフォルムだけ残してボカすとメインの踊り子さんとバックダンサーの雰囲気も出てくるでしょう。
花の動きを生かしたシャッタースピードの選び方
風が有ると茎も細いのでかなり揺れてしまいます、少し早めのシャッタースピードにしないとブレてしまいます。 逆に動きを出したい時はスローシャッターを使ってわざとブレた様子を撮ってもよいのですが、どこかに一点ピントが合って静止している場所を作らないとただのブレた写真になってしまいます。
ボケの活用
群生しているところでは、ボケをうまく使うと踊り子さんの雰囲気もでて効果的です。
色だけにした前ボケで幻想的な雰囲気に。
望遠レンズを使って狙った花以外をボカす。
ネジバナ撮影の季節とロケーション
地元で簡単に見られる花のため、わざわざ遠くまでこの花を見に行かないのですが少し山の方へ行くと咲く時期もズレてくるようです、ここでは、地元で観察したものを書いています。
見頃を迎える季節と地域の情報
こちらでは、毎年六月の中旬くらいから咲き始め七月下旬まで見られますが、咲いている場所が草地や芝生が多いので、草刈と重なってしまうことが多く、枯れるまで咲き続ける前に刈られてしまう事も多いです。 開花の遅い山の方では九月になっても見られるところがありました。
公園などでのネジバナ撮影スポット
ネジバナは大群生を作りやすい花ですが、安定感はなく、次の年には全く咲かないこともよくあります。その特徴から、ネジバナは大群落を形成しても、有名なスポットにはなりにくいようです。むしろ、咲く場所が場所だけに、雑草扱いをされることが多い花。その一方で、ネジバナの生命力や花の美しさには魅力があり、毎年の咲き具合を見守りながら、どこに現れるかを探す楽しみもあります。
まとめ
初めて出会ったときのネジバナ撮影の感動は、群生中で木漏れ日のスポットライトに浮かび上がる踊り子のような一本の姿でした。それ以来、毎年のシーズンを通じて、ネジバナを追いかける楽しみが生まれました。終盤では、枯れかけた花が衣装をボロボロにしても最後まで踊り続ける踊り子さん、そんな強さが感じられます。
ネジバナは、つぼみのうちは目立たず、花が咲き始めるとまるでフィールドに突然現れたかのような印象を与えます。前日まで何もなかった芝生に、今日は咲いているとそんな感動が年に一回の楽しみでもあります。
毎年撮っている同じような写真でも、個々の踊り子は独自の個性を持っています。今年の踊り子のステージをのぞいてみませんか。