子どもの頃虫取り網を持ってアゲハチョウをつかまえてその翅や身体の美しさに感動した記憶はないでしょうか、大人になってから目の前の花にとまって吸蜜をしているアゲハチョウをみて昔の感動が蘇りストロー(口ふん)を出して蜜を吸っている姿や、飛翔している姿を写真に残してみたいという気持ちが強くなってきました。
アゲハチョウを撮るには
チョウの中でも少し大型で写真に良く撮られるアゲハチョウ。撮り慣れていない方は、
あんなに早く飛び回っているチョウを写真で撮れるの?
特別なカメラや機材がいるのでは?
確かに、目の前を飛んでいるアゲハチョウにスマホを向けてもそれは簡単には撮れませんがアゲハチョウの生態や好きな花、撮影方法を覚えるだけで誰でも撮れるようになります。
最初は失敗もありますが、撮影において外せないポイントなども解説しますので実践して保存版のアゲハチョウの写真を撮ってみてください。
チョウの種類はかなり多いのですが、今回は子供時代に追いかけた記憶と比較的撮影しやすいということでアゲハチョウを選んでみました。
コンデジでも撮れるアゲハチョウ
私が初めてアゲハチョウを撮ったのは、コンデジで35㎜換算300㎜の望遠ズームがついた機種でした。離れた場所からそ〜っと撮ってみたら上手く撮れていたので感動した記憶があります。
ただし、これはあくまでたまたま撮れたというもので、そこから何度も試行錯誤しながら少しずつきれいに撮れるシーンやカメラの設定を覚えていったのです。
アゲハチョウの生態を知りましょう
アゲハチョウは世界に600種類いる中で日本には22種類ほど生息しています。
幼虫の時に食べる植物によって翅の色などに多少変化もあります。写真は白色が強い感じの個体。
撮影するにあたっては、まずアゲハチョウの生態を知らなければ、何処でいつ撮ってよいのか分かりませんので調べてみましょう。
アゲハチョウは柑橘系の植物によく卵を産みます。2〜3週間で幼虫が出てきてその葉を食べて成長してサナギの状態に変化、その後、成虫になると2週間から1か月の寿命があり秋になるまでこのサイクルを繰り返します。冬にはサナギの状態で越冬するものも出て来ます。
幼虫や蛹から羽化などを観察して記録写真を作るのも興味がありますが、この記事では成虫の撮影に絞って解説いたします。
植物がアゲハチョウを呼び寄せる仕組み
植物がアゲハチョウを呼び寄せるしくみには、植物が放つ香りや色、形状などが関与しています。
ツツジ科の花
ツツジ、サツキ、カルミアなど。ツツジの花には、アゲハチョウが好む特有の甘い香りがあります。
キク科の花
ヒマワリ、アキノキリンソウ、タンポポなど。これらの花は、アゲハチョウにとっての貴重な蜜源です。
スイカズラ科の花
スイカズラ、アベリア、タニウツギなど。アベリアは6月〜11月が花の時期にあたるのでアゲハチョウの活動時期と一致していてよく花に集まっています。
ヒガンバナ科の花
ヒガンバナ、ハマユウなど。特に赤色のヒガンバナにとまっている姿は似合いますね。
他にもヤブカラシやセンダンの花にも良く寄ってきています。
アゲハチョウが好む花は、明るく鮮やかな色、または青や紫などの濃い色を持つことが多く、香りも強いものが多い傾向にあります。ただし、個体差や環境によって好みが異なる場合もあるため、アゲハチョウがよく訪れる花を観察し、そこで蜜を吸っている植物をチェックすることが大切です。同じ花に何日も続けてやってくるということもあります。
アゲハチョウが好む花の形の例をあげてみると、コスモスや百日草などは平たんな花弁と大きな花でとまりやすいという利点があります。
植物が放つ紫外線の量がアゲハチョウを誘うことも報告されています。例えば、タチツボスミレの花弁は紫外線を反射し、アゲハチョウによく訪れられる植物の1つとして知られています。
撮影に適した場所や時間
花がある場所
程よく花や葉がある場所を選んで撮りましょう。程よくというところがポイントで多すぎず少なすぎず。たくさんアゲハチョウが寄っている花でも葉っぱや茎が煩雑な場合、被写体に被ることが有るので他の花を探すか、少し開けた場所にチョウが来るのを待ちましょう。
撮りやすい時間帯
朝は身体が暖まるまで翅を開いて日差しを浴びていることが多く撮影にはチャンスの時間です。普段寄って撮れないスマホでも接写できるくらい近寄れます。身体が暖まってくると少し寄っただけでも飛び立ってしまうのでそれまでに撮り終わること。
季節によって変わる活性
春、夏は結構動きも早く日中花にじっととまっている時間は短く、秋になって涼しい日が続くと、とまっていることも多くなります。真夏の炎天下は撮影には厳しい条件になりますが、チョウもそんな条件では飛んでいないので朝夕の気温が下がった時間に撮りましょう。
撮影に適した機材と設定
カメラは一眼、コンデジ、スマホなど状況に応じて使えます、画質にこだわる場合は一眼がおススメですが色はコンデジやスマホでも問題無く画質も相当こだわらない限りは大丈夫です。
一眼の場合のレンズは望遠、マクロ、広角とそれぞれシーンにより使い分けをします。
- 望遠レンズ アゲハチョウの大きさなら望遠レンズの300㎜くらいで離れたところからとまっているチョウをきれいに狙えます。飛んでいるところは連写で撮りますが、慣れないとタイミングが難しくなります。
- マクロレンズ ある程度寄っても逃げないようならマクロレンズでできれば等倍まで寄りたいところです。ただし一気に寄っても逃げられることが多いので離れたところから撮って少しずつ寄りながら撮影をします。途中で逃げられてもその前の写真が保険として残りますから。
- 広角レンズ このレンズの使い道は飛んでいるところを撮る事。絞りを絞ってパンフォーカス(すべてにピントが合う状態)でできるだけ寄って飛んだところを撮ります。下から撮るときはファインダーやモニターを見ずにノールックで連写をすると飛翔シーンが撮れます。
カメラの設定もとまっている状態か飛んでいる状態かで違ってきます。シャッタースピード優先のモードがあれば飛んでいる場合は、1/1000秒、とまっている場合は、100㎜のレンズなら1/100秒(1/焦点距離)よりも速めのシャッタースピードで撮りましょう。シャタースピードが遅くなる場合は、三脚を使用します。
AFのモードはカメラのメーカーによっても違いが有りますが、AIサーボで追従性、連写性をアップさせると撮りやすくなります。
撮影において注意すること
吸蜜をしている間は割と寄って撮る事ができますが、個体差があって敏感な個体は少しの動きで飛んでしまいます。近寄る時はあせる気持ちをおさえて最初はかなりゆっくり目でいきましょう。
望遠で撮っている場合でも、音には反応しませんが空気の振動など感じたりレンズの反射した光が入ったりするとにげることがあります。
よく飛んでくる花をチェックしておいてアゲハチョウが飛んでくる場面や、飛び立つ瞬間を連写で撮るなど動きを予測して準備することが大切です。気長に待つという事も必要になってきます。
選べる余裕があれば、背景もあまりゴチャゴチャしない所を選びましょう。望遠レンズやマクロレンズを使っているときは絞りを調整して背景をボカすこともできます。
透過光を使って撮ると翅の模様がきれいに撮れます。ただし完全に逆光の場合は翅以外の本体が暗くなりますのでストロボなど補助光が必要な場合もあります。朝方は翅を開いているときが多いので、開いた姿が撮りたかったら狙ってみましょう。
ピントは基本目に合わせますが、翅の模様や美しさを出したい時は目にこだわらず主題にしたいものに合わせます。
不思議な習性
以前撮った写真ですが、アゲハチョウを襲うモンシロチョウのように見えます。詳しい方に聞くとモンシロチョウがオスでアゲハチョウがメス、モンシロチョウのオスは2週間程度の寿命なので求愛と言うよりとりあえず生殖できるかという行動を示すことが有るそうです。アゲハチョウの習性じゃないのですがこれも面白い写真が撮れました。
工事現場などでセメントがこぼれたところにたくさんのアゲハチョウが集まっているのを見たことがありますカルシウムやナトリウムなどのミネラル補給という説もありますが詳しくは不明です。地面の水たまりもけっこう集まっていることがありますね。
ナミアゲハ(アゲハ)以外のアゲハチョウ科
アオスジアゲハ
動きも早く花にもなかなかとまることがなく忙しく飛び回り撮影が非常に難しいチョウです。
クロアゲハ
吸蜜中はとまったままが多いのでゆっくりと撮りやすいチョウです。
ギフチョウ
春先にアゲハチョウが出てくる前に見られます。個体数の少ない貴重なチョウです。
アゲハチョウ科ではないのですが、アサギマダラの撮影についての記事もいかがでしょう。
撮影の前にも準備が必要
アゲハチョウを簡単に撮れる方法と書きましたが、簡単に撮るためには生態や機材の準備をシッカリしておかなくてはいけません。記事を参考によく集まる花探しや撮影の下見などをしておくと失敗が減りますね。
思いつく注意点などを書いて来ましたが、今後さらに撮ってみての気づきや幼虫、蛹、羽化などもできたら追加していきたいと思っています。
まとめ
シジミチョウなどに比べると大きく撮りやすいアゲハチョウ。花の写真を撮っているときに現れることも多いのであわてず、おどかさないように花とのコラボもおさめてみたいですね。
春から秋まで長く撮影できますので、季節に合わせて撮影のポイントなどおさえて撮ってみましょう。
虫取り網をカメラに持ち替えたら少年時代の夢も撮れそうな気がしますね。