妖精と呼ばれる花はたくさん種類が有りますが、レンゲショウマが森の妖精と呼ばれる訳と、その魅力を写真に残すため10年近く撮り続けた画像を一部ご紹介します、ぜひ撮影の参考にしていただけたら幸いです。
レンゲショウマの魅力
レンゲショウマという名前は、私が10年以上前に山へ写真を撮りに行ったときに初めて知りました。その花の美しさにひとめぼれし、それ以来毎年この花を追い求めて写真を撮り続けています。
自然の美と繊細さ
レンゲショウマは真夏の最も暑い時期に咲く、日本特産のキンポウゲ科の山野草です。自生している場所は限られており、見つけるのはなかなか困難です。最近では園芸種も広まっており、自宅の庭などで栽培もできます。暗い森の中で見ると、まるで妖精が羽を広げて舞っているような姿に見えるため、「森の妖精」と称されています。
花の色と形のバリエーション
レンゲショウマは6月中旬に長い花茎を伸ばし、丸いツボミを形成します。そして、7月中旬になると花茎の先端に下向きに花を咲かせます。その花をひっくり返すと、ハスの花のような形に見えることから「レンゲショウマ」という名前が付けられました。この美しい花は、その繊細な姿や優雅な花弁の配置から、人々を魅了し続けています。
キンポウゲ科の花の特徴は花弁のように見えるガク片が外側にあって、中に本当の花があります。レンゲショウマで言うと芯を囲む筒のような形がそれにあたります。
季節の移り変わりとの関係性
レンゲショウマの開花時期は年ごとに気温によって変動します。気温が上昇しない年では、ツボミのままで2カ月以上過ごすこともあります。これは、レンゲショウマが繊細な花であり、環境の条件に敏感に反応するためです。季節の移り変わりや気候の変動が、レンゲショウマの開花タイミングに大きな影響を与えるのです。
緑のツボミが赤っぽく色づいてくると開花が近づいたしるしです。レンゲショウマを追いかける醍醐味は、毎年の気候変動との対話のようなものであり、その美しい花が自然の営みとともに季節を彩る様子を感じ取ることができます。
撮影の準備
レンゲショウマは山の中に咲いているため、撮影の準備には撮影機材に加えて山歩きに適した服装や装備が必要です。
撮影地の選定
御岳山(青梅市)
関東地方では御岳山のレンゲショウマ祭が有名で5万株の群生が見られ、今年(2024年)は7月20日~9月8日、レンゲショウマ祭が開催されます。開花情報はこちら
私の住んでる場所は中部地区で、御岳山は少し離れていて行けませんので主に行く撮影地をご紹介します。
長野県伊那市かんてんぱぱガーデン
かんてんぱぱガーデンは、伊那食品工業が運営している公園工場で広い敷地に山野草園などが有って四季の花が楽しめます。売店があり食事もできますが、そちらはリンク参照してください。
ここのレンゲショウマの撮影ですが。森の中と違って開けた野草園に植栽されていますので明るく、露出やシャッタースピードなどは無理なく選べます。
野草園の中で数カ所に分かれて咲いてますので、背景の具合など考慮して撮影場所を選ぶと良いですね。ただし、日当たりの良い場所は、早い時間から明るくなりますから、花が白飛びしてしまう可能性があるので注意が必要です。
9時開園になってますが、夏は開園直後にスプリンクラーで水まきをしてますので、カメラを持って歩く場合は、ぬれないように要注意です。ただし、この後が逆にチャンスで水滴の乗った花がきれいに撮れます。
豊田市足助エビネの森
中部地区の花好きな方には有名な場所で、個人の自宅の裏山に山野草などを植えて、一般に開放してみせてくださってます。
レンゲショウマの撮影場所は、香嵐渓の近くにあります。ここでは、レンゲショウマ以外にもエビネ、クマガイソウ、ミスミソウ、イワタバコなど、季節ごとにさまざまな花を楽しむことができます。
詳細な場所は「エビネの森」や「足助」で検索するか、「足助観光協会」にお問い合わせください。常連の方々はそのまま山に入っていきますが、初めて訪れる人には家の方が裏山を案内してくれることもあります。
レンゲショウマは山の斜面の1カ所に集中して植えられており、木々に囲まれているため、朝早い時間などはかなり暗い状態になりますので、注意が必要です。
あえて森の中の雰囲気が出したければ、写真のように思い切ってアンダー目でも雰囲気が出ますね。
真っ白のレンゲショウマが見られます。一株しかないので花の開くタイミングが難しいですね。
ここでは、珍しい八重のレンゲショウマなども見られます。
カメラとレンズの選び方
レンゲショウマの撮影場所では、比較的花に近くまで寄って撮影ができる場所が多いので、カメラにこだわる必要はありません。スマートフォンでも十分に美しい写真を撮ることができます。
広角から望遠までのレンズや、マクロレンズも特におすすめです。広い範囲を捉えたり、花のディテールをじっくりと撮影する際に役立ちます。
レンゲショウマの魅力を引き出す撮影テクニック
レンゲショウマの撮影は、いかにその妖精らしい姿をとらえるかというところがポイントになってきます。
ここではその魅力を引き出すテクニックなどをご紹介します。
適切な露出とフォーカスの設定
白い花は、特に露出に気をつけなければいけません、暗めの場所での撮影が多くなるので花が白飛びしやすくなります、花をきれいに撮るためには、少しマイナスの補正が必要な場合が多くなります。
白い花が透けて見えるように半逆光や透過光も効果があります、その場合は花が暗くならないようにプラスの補正をしてください。ストロボなどの補助光やレフ板などが有ると良いですね。私はカメラバッグにアルミホイルを入れて持って行ってレフ板代わりに使ってます。
どうしても暗くなってしまう場合は、RAWで撮って後で現像で調整するという方法もあります。上の写真は、補助光無しで暗めでしたので明るく調整してみました。
フォーカスは花を撮る場合は、基本めしべをメインにピント合わせをしますが少し引いて多くの花を撮る場合は、手前にピントを合わせたほうが自然にみえます。
花茎が細いわりに花が結構大きいので、風が吹いてる時は、シャッタースピード優先で早めのシャッタースピードを選ぶかISOを上げたり絞りを開くなどのブレの対策が必要です。一緒に行く人が居たら風よけになるものでガードしてもらっても良いでしょう。
構図と背景を考えよう
写真のようにレンゲショウマの茎は真上じゃなくちょっと横向きに伸びてそこに下向きの花をつけます。そのかっこうが妖精が飛んでいるようにみえるので構図は、花を下から眺めるようなかっこうで撮るのがより魅力的に見えます。レンゲのような形の花芯やシベは下から撮らないと見えて来ません。
レンゲショウマはたまごのようなまん丸のツボミも魅力の一つで、背景にぼかして入れると宇宙を思わせるような幻想的な写真になります。
近接撮影とマクロレンズの活用
マクロレンズは、この花の魅力を出すのに一番最適なレンズです。ただしマクロ撮影は被写界深度(ピントの合う範囲)がかなり浅く(狭く)なりますのでどこに主題をおいて撮るか考えピントを合わせましょう。
低い位置の花をさらに下から撮るのは結構難しいものです、そこで、ちょっとした裏技をお教えします。
鏡を用意して下向きの花の下に置き鏡の中の花にピントを合わせて撮ります。あくまで鏡本体じゃなく中の花にピントを合わせてくださいね。この時自分のカメラなど映り込まないように注意してください。楽な姿勢で下向きの花が撮れます。
撮影時の注意点
レンゲショウマの花は比較的長持ちしますが、できれば新鮮な開花時の雰囲気を撮影することが好ましいです。開花情報をチェックして準備しましょう。
一番花(最初に咲く花)は必ず花茎の先端から咲き始めますので、その下にツボミなどを配置すると面白い構図ができます。花が咲き進んでくると、下のツボミも次々に開いてきますが、最初の花は傷んでしまうことがありますので、下から撮影する際にはできるだけ花に触れないように気をつけましょう。
自然保護への配慮
実は、こちらでも自生で見られる場所も有ったのですが、環境の変化や盗掘などで、少なくなってしまいました。一部の山野草好きの方は、数少ない自生地を知ってるようですが、絶滅を防ぐために場所など公開していません。
上の写真は8年前に岐阜県の稲武で撮った自生のものですが、この次の年から全く絶えてしまいました。
妖精たちの生態
園芸種の栽培は増えていますが、一方で自生地は減少しています。御岳山のような場所が増えることを望みますが、自生地からの盗掘は心を痛めます。
自然のバランスを保護しながら、レンゲショウマを楽しむためにも、持続可能な栽培や保護活動が重要です。
レンゲショウマ撮影の楽しみ方
レンゲショウマを楽しむ方法はさまざまです。御岳山のような群生地で、花に囲まれて埋もれるように撮影するのも素晴らしい体験です。その美しい風景に身を置きながら、レンゲショウマの鮮やかな色合いや優雅な姿を捉えることができます。
また、山に入って数少ないレンゲショウマを探し求める冒険も魅力的です。静かな森の中を歩きながら、妖精のような花々を発見する喜びを感じることができます。レンゲショウマの楽しみ方は個々によって異なりますが、自然とのふれあいや美しい風景を楽しむことで、心が豊かになることに間違いありません。
季節の変化に合わせた撮影計画
レンゲショウマは、ツボミができてからすべて枯れるまでに2カ月以上かかります。
私がオススメするタイミングは、一番花が咲き始めた頃と花が増えてきて満開前のツボミが少し残った状態の頃です。
ツボミもぜひ入れたい被写体です。ピークを過ぎると花は増えてきますがツボミが無くなるので寂しくなります。
まとめ
レンゲショウマの魅力や写真撮影のアドバイスをご紹介しましたが、いよいよ今年もシーズンが近づいています。たまごのようなツボミが開く準備をしている姿は、まさに自然の神秘です。真夏の暑さから少し涼しさのある木陰で、森の妖精に出会ってみませんか?自然と一体となりながら、鮮やかな花々を撮影して思い出を残しましょう。ぜひ、この夏の冒険にレンゲショウマを加えてみてください。
一番暑い時期、ちょっと涼しい木陰で妖精に出会ってみませんか。
四季の花写真↓