桜の美しさは春に限らず、秋や冬でも楽しむことができます。春の一斉開花とは異なる趣があり、冬の桜は和の雰囲気を持ってきれいです。この記事では、冬に咲く桜の種類や、冬ならではの撮影方法を紹介します。桜の美しさを新たな視点から発見し、冬の風物詩をお楽しみください。
桜と冬の不思議な出会い
桜の咲く季節は春に限らず、冬も独自の美しさを放つ桜が存在します。春の桜とは異なる特徴や不思議な出会いに焦点を当て、その魅力を探ってみましょう。
冬に咲く桜の種類
種類 | 交雑種 | 花の色 | 花期 |
冬桜 | マメザクラと里桜またはヤマザクラ | 白 | 11月~12月、4月 |
四季桜 | エドヒガンとマメザクラ | ピンク、白、赤 | 3月~4月、10月~12月 |
十月桜 | エドヒガンとマメザクラ | 白、ピンク | 9月~4月 |
コブクザクラ | シナミザクラと十月桜(またはコヒガンザクラ) | 淡いピンク | 10~12月、4月 |
寒緋桜 | 原種(野生種) | 淡紅色 | 1月 |
ヒマラヤザクラ | 原種 | ピンク | 11月~12月 |
河津桜 | オオシマザクラ とカンヒザクラ | 濃いピンク | 2月~3月 |
アーコレード | ベニヤマザクラとコヒガンザクラ | 淡いピンク | 9月~11月、4月 |
不断桜 | ヤマザクラとオオシマザクラ | 白 | 真夏以外 |
冬桜
冬桜は小葉桜(コバザクラ)とも呼ばれ、小型の葉が特徴です。秋に美しい白い花を咲かせ、江戸時代から栽培されています。全国に分布し、群馬県藤岡市の桜山公園は冬桜で有名で、11月中旬には紅葉とともに美しい風景を楽しめる名所です。
咲き始めはピンク色で徐々に白くなります。主な開花期は11~12月と4月の年2回。
四季桜
四季桜は、江戸時代から栽培されている2季咲きの品種です。愛知県豊田市の小原地区は「四季桜の里」として知られ、11月にはモミジの紅葉と見事な対比を魅せ、その風景は美しさで称賛されています。四季桜は名前通り、真夏以外の四季を通じて花を咲かせ、ピンク、白、赤などさまざまな花色と多様な花弁の形を持っています。冬に咲く花は春よりも花数が多く華やかです。
十月桜
十月桜は江戸時代から栽培され、小型で庭園にも適しています。名古屋市の庄内緑地公園では美しい十月桜の並木が広がり、10月から春まで咲く秋桜として知られています。淡紅色の半八重咲きの中輪の花を持ち、秋から冬にかけて咲く桜の中でも最も有名で、風情のある花を楽しむことができる品種です。
コブクザクラ
コブクザクラは、花弁が細く、黄色い斑点が特徴の淡紅色で八重咲きの花を持ちます。ボリュームのある花姿は秋から冬にかけて咲く桜の中でも珍しく、その美しい花が庭園や公園を彩ります。名前の由来は花一輪に対して2~3個のサクランボができることから。花期と八重咲きの特徴からジュウガツザクラと間違えられやすいです。
寒緋桜
寒緋桜は寒い冬に美しい淡紅色の花を咲かせ、半八重咲きで花弁の先がとがり、中心に黄色い斑点が特徴です。耐寒性があり、冬の庭園でよく栽培されます。沖縄県では春桜ではなく、冬に楽しめる寒緋桜が名護中央公園や八重岳、今帰仁城址などで見られ、寒緋桜まつりではライトアップされた桜が美しい夜景を演出します。
ヒマラヤザクラ
ヒマラヤザクラはヒマラヤ地域に自生し、ソメイヨシノよりも濃いピンク色の花が特徴です。花弁が太く、長い雄しべが目立ちます。日本では温暖な地域で時折見られ、特に11月から12月に見頃を迎えます。熱海市が有名で、市内各所に植えられたヒマラヤザクラが美しい景観を提供しています。
河津桜
オオシマザクラ とカンヒザクラ の自然交雑から生まれた日本原産の栽培品種。 河津桜は1955年に静岡県河津町で発見された品種で、一重咲きで濃いピンク色の大きな花が印象的です。原木からクローンで増やされ、河津町内に広く植えられ、2月上旬から3月上旬にかけて華やかな花が咲き誇ります。花付きが良く、町内各所で見頃を迎えます。
アーコレード
アーコレードは、ベニヤマザクラとコヒガンザクラの交配種で、英国で誕生した桜の品種です。日本の気候において、秋と春の両方に咲く特徴があります。淡紅色の大輪で半八重咲きの美しい花を春先に特に見せます。
不断桜
真夏以外、枝に少しずつ花をつけ、四季を通じて咲く「不断桜」。毎年3月中旬から下旬にかけて、美しい花が満開になります。特に、三重県鈴鹿市寺家3丁目の子安観音寺にある「白子不断ザクラ」は国の天然記念物として指定され、境内を彩ります。
春の桜との違い
同じ桜でもなぜ開花の時期が違ってくるのか?
春咲きの桜との違い
春咲きの桜は、春に花が咲く仕組みが独特です。春に花が咲いて散った後、夏には次世代の花芽ができ、秋には成長を抑えるホルモンが出て、冬の寒さで休眠に入ります。冬が過ぎ、一定期間の寒さで休眠が解除され、春に向けて成長し、開花し、これを「休眠打破」と呼びます、休眠解除には冬の寒さが必要で、種類によって要件が異なり、1月下旬から2月上旬に解除され、気温が高いほど早く開花します。
日本の桜のルーツ
ヒマラヤザクラは秋に咲く桜で、日本の桜と共通の祖先と考えられています。桜はヒマラヤから日本へ広がる中で、春咲きから秋咲きへ変化していった可能性があります。ヒマラヤの温暖で湿潤な環境で誕生した桜は、寒冷な冬がある地域に進出する際、冬季に休眠して冬を越す進化を遂げ、春に開花する特性を獲得しました。この進化により、本来は秋に咲く桜が、冬を越すために春に開花するように変わったのです。
2023年は夏の高温が来年の開花にかなり影響しそうです、11月になっても夏日があったせいで本来は落ちているはずの葉がまだ緑色をして木についたままで、花芽が休眠に入るタイミングが大幅に遅れて来ます、単純には計算できませんが開花には8度以下の低温が累計1,000時間以上必要ということで2024年の開花は遅れるかもしれません。
冬の桜スポットを巡る旅
春の桜と同じで冬も桜の観光スポットは数多く存在します。
冬の名所で咲く桜
私が撮ってきた愛知の冬の桜のおすすめを紹介します。
小原四季桜(四季桜)
豊田市小原地区の四季桜。今年の四季桜まつりは、11月11日~30日までです。
街中の数カ所の会場で桜と紅葉のコラボが見られます。
山一面に見られる川見の四季桜。
庄内緑地公園(十月桜)
名古屋市西区の庄内緑地公園。駐車場の上、入り口から噴水に向かう両側の堤に並木があります。
大野極楽寺公園(熱海桜?)
一宮市にある大野極楽寺公園。銘板には河津桜と有るのですが、年越し前に開花する河津桜は聞いたことがなくもしかしたら早咲きの熱海桜の可能性もあります。
尾張旭森林公園(コブクザクラ)
尾張旭市にある森林公園植物園(有料)。展示館の周りに春に咲く御衣黄とともにに植えられています。
冬にしか見られない桜の風景写真
花が咲くことだけが桜の楽しみではありません。
「弘前市の冬に咲くさくらライトアップ」
ソメイヨシノに積もった雪をピンクにライトアップして花にみたてた「冬に咲くさくらライトアップ」イベントを毎年開催しています。点灯期間:2023/12/1~2024/2/29
雪と桜の木
ソメイヨシノに積もった雪は、ライトアップが無なくても画になるものです。
冬の桜を写真で切り取る
基本、桜の写真撮影は春や冬で大きく変わることは有りませんが、冬ならではというものはありますのでここで紹介します。
冬の光と桜の影の美しさ
春の華やかさに対して冬の桜は、その花が持つ奥ゆかしさを強調して撮影してみたいです。冬の光は柔らかく、花の質感を引き立たせやすい特長があります。曇りの日は避け、青空や暗い背景を選ぶと、花を際立たせ、深い色合いで美しい影を引き出すことができます。春とは異なる冬ならではの優雅な雰囲気を、写真を通じて表現してみましょう。
雪の中の写真も冬ならではですが、こればかりは天気次第です、でも今は天気予報も雪などの情報が早めに予測できるので準備も出来そうですね。
紅葉とともに撮る
桜と紅葉を一緒に撮るスポットは全国に広く存在し、春には味わえない美しい風景を楽しめます。桜の花を前に配置し、紅葉を背景に取り入れると、優雅で映えるコンポジションが生まれます。逆にすると、紅葉の赤が目立ちすぎて、花が埋もれてしまうことがあります。
紅葉の魅力は単に赤だけでなく、黄色や茶色も含まれています。これは春の緑が豊かな風景とは異なる趣を楽しむことができます。
背景を工夫する
背景の選択は桜の表情を左右します。白系統の桜には濃い背景がふさわしいです。例えば、深い緑の樹木や暗めの建物などが花を引き立てます。一方、ピンク系統の桜は青空が最も映えます。晴れた日には透明感のある青空を背景にすると、花の美しさが一層際立ちます。桜と背景の調和を考え、季節感と花の魅力を引き出す工夫をしてみてください。
質感の出し方
桜の花の質感を引き立てるには、透過光を利用することがポイントです。例えば、逆光で撮影することで花びらが透けて美しく見え、繊細な質感が表現できます。逆に順光の場合、花の色は鮮やかに映りますが、立体感がやや乏しくなります。
具体的な例として、太陽が背後から差し込む状況で、花びらが透けて光を受ける瞬間を捉えると、花の透明感が際立ちます。また、影ができると質感が強調され、花の輪郭がくっきりと浮かび上がります。
逆光や影を上手に取り入れつつ、桜の花が持つ独特の質感を引き出すことで、より印象的で美しい写真に変わります。
望遠レンズと広角レンズ
冬の桜を撮影する際、望遠レンズと広角レンズの使い分けが重要です。桜が春ほどの豊かな並木でない場合、望遠レンズやマクロレンズを活用して花のクローズアップを捉えることがおすすめです。花のディテールや質感を際立たせ、花そのものを楽しむことができます。
一方で、広角レンズを使用すると、下から青空を背景に取り込むなど、桜を取り囲む幅広い景色を表現できます。これにより、花だけでなく周囲の雰囲気や季節感も同時に捉え、幅広い表現が楽しめます。
花の選択
冬の桜の撮影において、花の選定は重要です。春の桜と異なり、冬の桜は花期が長くなる傾向があります。しかし、花が咲き始めから散るまでの期間中、花が傷んでしまうことがよくあります。そのため、撮影する際にはできるだけ咲きたての花を選んで撮ることがポイントです。
咲きたての花は美しさが際立ち、花びらのみずみずしさや質感が引き立ちます。花が一番美しい状態で撮影することで、冬の桜のはかなさや優雅さをより鮮明に表現できます。撮影場所やタイミングに注意しながら、花の選定に心を配りましょう。
四季の花については↓
まとめ
春に咲く桜の潔い咲き姿に対して冬に咲く桜も、見逃せない華やかさと和の雰囲気を持っています。春の桜の一週間限定の見ごろに対し、冬の桜は秋から春までの約半年間、その美しさを楽しむことができます。写真に収めて、冬の静寂に春の優雅さを添える一瞬を切り取りませんか。記事を通じて、冬の桜が持つ特別な魅力に触れ、季節の美しさを共有しましょう。