セミの羽化の神秘を撮ってみよう!アートな写真撮影のテクニックと注意

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夏の暑い日々、子供の頃にセミの声を聞きながら虫捕り網を手に出かけた思い出はありませんか?最近では、子供たちの中にはセミに触れることを避ける傾向が増えているようです。

しかし、セミの一生の中で最も重要な羽化の瞬間は、真っ白な姿が見られとても神秘的です。触れることができないとしても、子供たちでもその光景を目にするだけで感動することでしょう。

私は毎年セミの羽化の瞬間を撮影してきました。今回は、その撮影のコツや注意点をお伝えしたいと思います。

セミの一生

写真撮影の前にセミの一生について少し触れていきたいと思います。他の昆虫とは違った一生を知ることで羽化の大切さも見えています。動画は普段は見ることがない卵から生まれた幼虫が土に潜る所です。

秋まで見られる抜け殻

以下では、セミの一生について段階的に説明します。


  1. セミの一生は、まず卵の形で始まります。セミのメスは、植物の茎や枝の中に卵を産み付けます。一度に何十個もの卵を産むことがあり、これらの卵はセミの種類にもよりますが翌年の梅雨時に孵化するものも多いです。ちなみに卵からかえることを孵化といい蛹から成虫になることを羽化といいます。セミの場合は蛹を作らない「不完全変態」ですが幼虫から羽化します。
  2. 幼虫
    卵から孵化すると、冒頭の動画のように幼虫(ニンフ)と呼ばれる段階に入ります。幼虫は小さくて翅がなくやわらかな体をしています。成長しながら、何度か脱皮を繰り返し各脱皮の後、殻は硬くなり、幼虫は大きくなっていきます。そのまま約2~5年を土の中で過ごします。
  3. 成虫
    幼虫期を経て成長したセミは、成虫として羽化します。羽化とは、成虫が殻を脱ぎ捨て、新しい外骨格が形成される過程です。羽化後、セミは成虫として新たな世界へ飛び立ちます。成虫は翅を持ち、さまざまな色や模様を持った美しい姿をしています。
  4. 交尾と産卵
    成虫のセミは、生殖行動を行います。オスは鳴き声や特定の行動でメスにアピールし、メスとの交尾を行います。交尾後、メスは植物に卵を産み付けます。これによって、新たなセミの世代が育まれます。

羽化は大切なプロセス

羽化直後のクマゼミ

羽化は、幼虫から成虫への変身プロセスです。セミにとっては一生をかけた大仕事であり、その神秘的なプロセスを目撃することは、自然の驚異の一つです。羽化の瞬間を撮影したり、その変化を観察したりすることは、日常の騒がしさから離れて、心を童心に戻す素晴らしい機会です。セミが殻を脱ぎ捨て、新たな姿と能力を手に入れる姿は、生命の美しさと成長の不思議を体感する絶好のチャンスです。

羽化のステージ

羽化のステージを写真付きで解説。以下に、セミの羽化の詳細なプロセスを順に説明します。

ステージ1: 羽化の前の準備

羽化前の幼虫

セミの幼虫は、羽化の前に最後の脱皮をします。脱皮が近づくと、幼虫の外側が固くなります。そして、幼虫は羽化する場所を選び、体を支えるために足をしっかりと固定します。

ステージ2: 脱皮が始まる

背中が割れてすぐの幼虫

幼虫が最後の脱皮を始めると、殻が割れ始めます。脱皮のための準備が整い、成虫の体が形成される段階です。

ステージ3: 殻からの脱出

殻から出ようとしている成虫

セミの成虫は、体内で外骨格の分裂と形成が進行します。羽化のプロセスでは、体内の圧力や体液の働きによって成虫が殻から抜け出そうとします。幼虫の段階で傷がついて体液が少しでも外に出ていたら殻から抜け出したり翅を伸ばすことができません。

ステージ4: 成虫の露出

殻から出る寸前の成虫

成虫の体が殻から徐々に露出していきます。この段階では、セミはしばしば休息をとります。体が完全に硬化するまで保護される必要があります。この時点では翅はまだくしゃくしゃの状態で体液が入ってくることで少しずつ伸びていきます。

ステージ5: 成虫への変化

殻から抜け出した成虫

最終的に、セミは完全に殻から抜け出し、翅も伸びて体も硬くなり成虫として飛ぶことができます。地上から空へ活動の場を広げていきます。

通説では、外の世界に出て1週間ほどでその一生を終えると言われていますが、実際は1カ月以上生きている個体もあり一概にはいえないところがありそうです。どちらにしても、セミにとって一番貴重で一番危険な時間がこの羽化の時なのです。

神秘的な羽化の時

幼虫の不思議な行動や羽化後の姿はすべてにおいて神秘的なものです。その行動とは?

羽化場所の選定

セミの抜け殻の集団

よく見かけるのが、枝や葉に抜け殻がいくつにも重なった状態です。これは、幼虫が意図して抜け殻に向かっていくのではなく登った先に抜け殻があった場合、そこを羽化の場所に選ぶことが多いようです。

抜け殻があるという事は、無事に羽化できる場所とセミが理解しているのか分かりませんが理由はいまだに謎のようです。こうした不思議な動きも羽化を神秘的にみせる要因なのでしょう。

羽化後の姿

羽化後の成虫

羽化してから色が変わって飛べるようになるまで、その姿は真っ白で実に神秘的です。なぜ外敵に狙われやすい白色で出てくるのか、これまた不思議ですね。

ニイニイゼミの羽化

家の近くではアブラゼミ、クマゼミ、ニイニイゼミがみられますが、ニイニイゼミが一番早く次いでアブラゼミ、クマゼミが羽化し始めます。

アブラゼミの抜け殻と羽化後

特にアブラゼミは成虫の茶色い色と対照的な白さで別の生き物にみえますね。

そして、日の出と同時に聞こえる騒々しい鳴き声、実は炎天下の日中は全く鳴かずに静かなのです、涼しい朝だけ鳴くのならどうしてもっと涼しい時期に出てこないのでしょうね、これもまた不思議の一つです。

撮影の準備

撮影の準備としては、機材もそうですが、前もって撮影ポイントなども選ぶ必要があります。

必要な機材

カメラは一眼でもスマホでも撮る事ができます、ただし夜間や早朝の撮影は三脚がないとブレた写真になってしまいます。

羽化の瞬間というのは、それほど長い時間じゃありませんのでしっかりと準備して撮り逃しのないようにしたいものです。

撮影ポイントの選び方

下から見上げた羽化の様子

撮影のポイントとしては、公園などセミの鳴き声がよく聞こえる場所で木の根元の幼虫が出た穴が多いほどで会えるチャンスが増えます。抜け殻が枝の高い場所に多い所は、撮影がしにくいので低い枝や木の幹などにたくさん抜け殻がある場所を探します。 

撮影以外の準備

暗いうちに撮影ポイントを探す場合は、懐中電灯などが必要、足元などに注意をしないと木の根が飛び出しているところも有ります。

明るくなる頃でも、木の近くや草むらでは、蚊が大量にいます。羽化の時間を待って撮影中も刺されないように虫よけスプレーは必須です。暑くても長袖の方が安全でしょう。

撮影の時間

夜間の撮影

ネットや本などでは、幼虫は前日の夕方から夜中に羽化をして朝には飛んでいくので撮影は夜中がベストと書かれていますが、周囲が暗いため、撮影場所の確保は難しいものです。またストロボを使わないと撮影できません。その結果、写真の出来栄えは立体感や微妙なグラデーションが欠けたものとなります。

羽化後の成虫

私の経験から言えば、羽化を撮影するのに一番オススメなのは、日の出直前から日が昇るまでの時間帯です。その年の最初のセミの声が聞こえ始めて二週間ほどで羽化のピークを迎えたくさんの幼虫が一斉にでてきます。

出始めの成虫

羽化のピークになると夜中じゃなく朝方に遅れて出てくる幼虫が目立ってきますのでそれを狙って撮ります。もちろん夜中ほど多くはないのですが、明るくなった時間に撮影できればストロボは無しで自然光でも大丈夫。時間帯は午前5時~6時半くらいですが一番遅い時間で午前8時頃に撮影したこともあります。

撮影テクニック

背景に玉ボケを入れた羽化

今回載せている写真はほとんど自分で撮ったものですが、私が羽化の様子を撮影する際は、クッキリと撮った昆虫図鑑とは異なるアプローチを取っています。撮影にはアートな要素を取り入れた作品作りを心掛けています。ただし、あくまで主役はセミというのを忘れずに。

夜の写真は光を選ぶことができないのでここでは、夜間ではなく朝方の撮影に焦点を当てて解説していきます。

間近での撮影方法

等倍の近接撮影

レンズの選択においては、マクロレンズが最適です。高い場所や遠い場所では撮影できないため、私は三脚を立てた高さくらいで幼虫を探して撮影するようにしています。

マクロレンズを選ぶ理由は、等倍まで寄っても幼虫が逃げることがないからです。また、明るくなると鳥が幼虫を狙ってくることがあります。望遠レンズで遠くから撮影していると、幼虫が鳥に食べられてしまうこともあるのです。マクロレンズを使用して寄ることで、幼虫を鳥から守る役割も果たすことができます。

また、近くまでよれるならばスマホでも背景ぼかしなどの機能を使うと被写体が引き立ってみえきれいに撮れます。

マクロレンズでの効果

マクロレンズにはさまざまな種類がありますが、中でも100mm前後の中望遠レンズは効果的な撮影が可能です。細部までくっきりと撮影したい場合は、広角レンズやスマートフォンでも撮影できますが、虫の写真においては、あまり細部までくっきりと撮るとグロテスクに見えることがあります。

背景をぼかした画像

そのため、背景をぼかし、手前の目の一点にピントを合わせ、透過光を利用して羽根の美しさや透明感を引き出すようにしました。これらは花や人物のポートレートを撮影する際に使われる手法です。

羽化撮影の失敗と対策

撮影だけじゃなく羽化の失敗もあります、中には避けられる失敗もありましたのでご紹介します。

光の使い方

透けた翅を撮影する際には、逆光や透過光を活用したいと思っていますが、場所によってはかなり暗い状態になることもあります。そのため、補助光があると非常に便利です。

羽化後のクマゼミ

ストロボの光は、一般的には羽化には影響がないと言われていますが、私の経験では以前、至近距離で何度もストロボ撮影を行った際に、セミの背中が割れた状態で動かなくなってしまったことがあります。ストロボが原因であったのかは定かではありませんが、それ以来、できるだけ自然光での撮影を心がけています。

安定したカメラ設置の方法

朝方の明るくなりかけている時間帯でも、露出にはかなりの注意が必要です。ISOを上げたり絞りを開放したりするなど、工夫が必要です。また、三脚があるとタイムラプスなどの撮影も可能です。

逆光のセミ

朝は光の入り方が短い時間で変化するため、ちょうど良い場所を見つけたと思った瞬間に、光が入って被写体が完全に逆光になり、シルエットになってしまうこともあります。光の入る方向を読んで三脚を据えることも必要です。

撮影の注意点

撮影時の注意点として、幼虫に触れないように心がけることが重要です。幼虫を誤って落としたり傷つけたりすると、「羽化不全」と呼ばれる状態になり、羽化の途中で殻から出られなくなり死んでしまうことがあります。また、翅や脚に奇形などが生じる可能性もあります。

羽化途中で落ちたセミ

写真は羽化の途中で殻ごと下に落ちたのですがなんとか殻から抜け出すことができたようです。このままでは虫などにもやられそうでしたので、枝にとまらせて飛べるまで見守っていました。本来は自然の状態で人が手を出すことはタブーなのですが、必死に生きようとしている姿につい手が出てしまいました。ただし、人の目の届かないところでは、普通に起こっていることなのですね。

羽化の失敗は5割近くあるようです。残りの5割のうちまた半分以上が羽化後に鳥などの天敵にやられて生き残るのは本当にわずかで厳しい世界です。

羽化後翅を伸ばしているところ

幼虫が羽化する過程をそっと見守り、応援する姿勢を持ちましょう。彼らの自然な成長を妨げず、羽化を円滑に進めることが大切です。写真を撮ることは素晴らしい体験ですが、幼虫の健康と生命に最優先で敬意を払いましょう。

目を離さない

羽化後の成虫

マクロレンズの所でも書きましたが、羽化の瞬間はたくさんの天敵がねらっています。以前、朝の散歩の途中で羽化を見つけたので、家にカメラを取りに戻って5分ほどで戻ってきたのですが、もう跡形もなく鳥にやられてしまいました。できることなら至近距離に三脚を据えてシャッターを切るとき以外は周りに気を配って鳥がよらないようにしておきたいものです。

まとめ

夏の風物詩であるセミの合唱。その一生の中でも特に重要な瞬間を撮影することは、感動を止めることができないものです。

セミの寿命は数年間で、その中でも羽化の瞬間はわずか30分から1時間ほどです。しかし、その短い時間には生命の神秘が詰まっています。羽化のプロセスや変化は、次世代の子供たちに生命の尊さを教える重要な教訓となるでしょう。だからこそ、そんな貴重な瞬間を写真に残しておきたいのです。

羽化後のアブラゼミ

写真は時間をこえて続く証拠であり、セミの羽化の瞬間を写真に残すことで、その美しさや神秘さを後世に伝えることができます。また、自然の驚異や生命の神秘を感じさせる写真は、私たち自身にも心に響くものです。

羽化の瞬間を捉えることは、自然界の摂理や生命の営みを垣間見る素晴らしい機会です。ぜひセミの羽化の瞬間を写真に残しておきましょう。そうすることで、次世代に生命の大切さや自然の美しさを伝える一助となることでしょう。

チョウの撮影はこちらから↓

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