フィルム写真の需要が増えてきています
プロの方は以前からフィルム写真を撮り続けている方も多くみえますが、意外なことにデジカメになれている世代でも写真展などをみてフィルムで撮ってみたいという人が増えてきているそうです。
そこで、フィルムカメラ自体知らないけれど撮ってみたい方へ向けて現在のフィルムカメラやフィルムの入手先、現像、プリントなどを調べてみました。
フィルムや現像料金の変化
私自身は、今から数十年前フィルムカメラで写真を撮って、自分で現像処理をしていました。当時は現像、プリントの料金が今よりも安かったのですがモノクロは自分で明暗の調整ができる便利さがあるという理由から、カラー現像も趣味程度でおこなっておりました。
今は、フィルム自体の価格も上がって36枚撮り1本買って現像、プリント(36枚)まですると格安プリントを使っても1枚あたり70円~80円になります。1回の撮影で100枚〜200枚なんて撮っているとかなりの出費になりますね。
コスパの良い趣味だったカメラも時代の流れで変わって来たようです。確かに、デジタルはデータで保存してPCなどで閲覧、必要があればその分だけプリント、撮影もその場で確認して削除や編集までできてしまいます。
あまりメリットが無さそうなフィルムカメラですが、デジタルでは出せないソフトな表現や柔らかな階調はプロだけのものじゃなく撮ってみたいという声が年々増えて来ているのも事実なのです。
デジタルとフィルムの違いについて
フィルム写真というものを知らない世代も増えてきていますので、簡単にフィルム写真とデジタルの違いについてお話します。
カメラやフィルムについて知りたい方は先へ。
フィルム写真は1970 年〜80年くらいがピークで、その後デジタルに押されて下火になっていきます。
デジタルとフィルム写真を比べてみると、見た目はデジタルの方がクッキリとコントラストも強く感じます。ただし、細かな所を比べてみるとコントラストが低い分フィルムの方が白飛びや黒つぶれが少なく見えます。
フィルム写真は光をフィルムに塗った感光材に感光させて潜像というものをフィルム上に生成、現像によってネガ(ポジ)フィルムを作りそれをもとにプリントという工程を経て写真ができあがります。
現像の工程が済むまではどんな写真が撮れているのか分からないというデメリットがありますが、逆に1枚ずつ大切に撮る事で丁寧に撮影ができ今思うと写真の上達も早かった気がします。
デジタルはカメラのイメージセンサーがフィルムの役目で、そこに入った光の情報をSDなど記録メディアに保存、データを使ってプリントも可能です。RAWという形式でPCで現像処理をする方法もあります。
その場で写真が見られるので、ピンボケやブレなどの写真をその場で削除可能です。データはPCなどの大画面で見られるのですべてプリントするという無駄も無くなりました。
フィルムとセンサーの違いだけじゃなく。カメラの構造も変わってきてフィルムカメラは今のデジタルのようにモニターなど無く裏ぶたを開けフィルムを装填して1枚撮るごとに巻き上げ、撮り終わったら巻き戻してフィルムを取り出します。後期になると自動で巻き上げ巻き戻しができる機種も出てきて少し楽になります。カメラの形は似ていても中身はかなり違いが有りますね。
フィルムカメラで注意すること
フィルムカメラならではのミスというのもけっこうありました。これからフィルムカメラ始めようとする方は特に注意してください。
撮影の途中でふたを開けてしまい感光して没写真になるというミスは慣れた方でもついやってしまう失敗。すぐにふたを閉めた場合感光していない写真が助かることも有りました。
上の写真はふたを開けて1部感光してしまいましたが、トリミングなどすれば使える部分もあるのがお分かりになりますでしょうか。
フィルムの装填ミスというのもよくあったことで、歯車にフィルムがかみ合っていなかったりスリットから抜けていたりすると何枚撮っても終わらないという事態に。巻き取りした時巻き戻しクランクが動いているか確かめることで防げます。
ISOはカメラじゃなくフィルムで決まっているのでカメラ側の感度設定を合わせないと露出が変わってきます。 フィルムの表示に合わせ1本撮り終わるまでは変えてはいけません。
フィルム写真はカメラの性能だけじゃなく使うフィルム、選ぶレンズでかなり仕上がりが変わってきます。特にレンズによる差は、デジタル1眼より顕著に写真に現れます。
解像度はネガカラーフィルムで1350万画素、リバーサルフィルムで1600万画素くらいです。画質に関しては、正直今のデジタルにはかなわないのですが初期の頃のデジタルはこれより少ない画素数のカメラも有りました。
リバーサルのダイレクトプリントなどは、デジタルに近いシャープさやコントラストがあります。
フィルムカメラは機械式シャッター搭載の機種も有って電池が無い状態でもシャッターは切れますがTTLなどの測光が出来ないのでマニュアル撮影に慣れていることや別で露出計を持っているという条件が無いと撮れないことが多かったようです。ただ壊れにくいという特徴も有るので中古の機種でも機械式シャッターは、人気があります。
現行のフィルムカメラ
1眼レフなどのカメラは現行では無くなってほぼインスタントカメラが主流のようです。
コダック フィルムカメラM35
コダック フィルムカメラM35
露出設定など無いインスタントカメラです。
富士フィルム チェキ
その場で現像でき手軽なインスタントカメラ、専用フィルムが必要です。
本格的なカメラとしては、ライカがありますが現行品は2020年現在2機種で完全機械式フィルムカメラ、どちらも70万円超という高級カメラになります。
一眼レフのフィルムカメラ(中古)
中古で割と売れている機種を選んでみました。
機種 | シャッタスピード | 露出 | 発売 | 備考 |
ニコンFM2 | 1/4000秒 | フルマニュアル | 1984年 | 縦走り金属幕フォーカルプレーンシャッタ ー 機械式 TTL開放中央重点測光 AE無し Fマウント |
ニコンF3 | 1/2000秒、B | 絞り優先AE マニュアル | 1980年 | チタン幕横走りフォーカルプレーンシャッター 電子式(緊急用1/60秒機械式シャッターあり) TTL中央部重点開放測光 Fマウント |
ペンタックス superA | 1/2000秒、B | 絞り優先AE シャッター優先AE プログラムAE マニュアル | 1983年 | 縦走り金属幕フォーカルプレーンシャッター 機械式 TTL開放測光 KAマウント |
canon AE-1 | 1/1000秒、B | シャッター優先AE マニュアル | 1976年 | 横走り布幕フォーカルプレーンシャッター 電子式 TTL開放中央重点測光 FDマウント |
Canon new F-1 | 1/2000秒、B | (装備で違い) 絞り優先AE シャッター優先AE マニュアル | 1981年 | ハイブリッド式シャッター 1/90秒を境に、高速側とBは機械式、低速側は電子式 TTL開放測光 FDマウント |
オリンパスOM-4 | 1/2000秒、B | 絞り優先AE マニュアル | 1984年 | 横走り布幕フォーカルプレーンシャッター 電子式 中央重点ダイレクト測光 マルチスポット測光 |
ニコンFM2
フォーカス、露出すべてマニュアル。シンプルな写真の基礎が学べる機種。
中古価格は、25,000円~ 50,000円
ニコンF3
キャノンのnewF-1のライバル機プロ用の一眼レフ。 プロ用のカメラにAEが必要あるのかと言われた時代ですが、自動化を進めるきっかけになったカメラ。ニコンのフラグシップ機で20年間販売され長く愛されていまだに人気のある機種です。
中古価格は、50,000円~180,000円とまだ高値で売られています。
ペンタックス superA
この以前の機種MEでは露出が絞り優先AEしか無かったのですがシャッター優先AE、プログラムAE、マニュアルと選べるようになりました。
中古価格は、13,000円~25,000円
Canon AE-1
標準でワインダーの使用を可能としていました。ワインダーとは、フィルムをモーターにより自動で巻き上げるアクセサリーのことで当時は「連写1眼」というキャッチフレーズが有りました。
当時のAE付きの一眼レフカメラは10万円以上が多かった中で8万円台とかなりコスパが良かったようです。
中古価格は、5,000円~20,000円
Canon new F-1
プロ用高級一眼レフ、通常のアイレベルファインダーではマニュアルのみAEプリズムファインダーを装着して絞り優先AE、ワインダーかモータードライブを装着でシャッター優先AEが使用可能に。
必要な機能を自分でカスタマイズできるカメラ。
中央重点部分測光・中央重点平均測光・スポット測光がスクリーン交換で切り替え可。
中古価格は、40,000円~100,000円(付属品や状態でかなり価格が変わります)
オリンパスOM-4
オリンパスのフィルム1眼レフの最終形態、OM1と3(奇数)は機械式1眼レフ、OM-2と4(偶数)は電子制御のカメラです。
スポット測光を取り入れて単体露出計にも匹敵するカメラ。ハイライト、シャドウのコントロール機能も搭載。
中古価格は、15,000円~20,000円
価格(ボディのみ)はあくまで一例で状態や付属品などで大きく変わることがあります。
現在購入可能なフィルム
フィルムも割と入手しやすいメーカーでネガ、ポジ、白黒で調べてみました。
ネガフィルム
ネガ(36枚撮り) | 価格 | 備考 |
フジカラー SUPERIA PREMIUM 400 | 1,650円 | 高感度でありながら優れた粒状性を実現。 日本人の肌色をいきいきと美しく再現. |
フジカラー SUPERIA X-TRA 400 | 1,650円 | 2018年3月、生産終了 在庫があれば入手可。 |
フジカラー FUJICOLOR 100 S | 1,320円 | ハイライトからシャドーまでの再現領域が拡大。 ISO100ならではの優れた粒状性 |
コダック UltraMAX400 | 2,100円 | 彩度、コントラスト高め、シャープ。 青色の発色に特徴があります。 |
コダック プロフェッショナル エクター100 | 3,410円 | シアンの発色が良く、青空がきれいに出ます。 |
コダック ポートラ 800 | 4,190円 | ポートレート向きで肌の色がきれいに出ます。 ISO160や400も有りますが5本のセット売り。 |
ポジ(リバーサル)フィルム
ポジ(リバーサル) | 価格 | 備考 |
フジクローム プロビア 100F | 2,160円 | プロ写真家からも信頼される 高性能スタンダードフィルム。 |
フジクローム ベルビア 100 | 1,980円 | シャープネスが高く、 ダイレクトプリントにも適しています。 |
コダック エクタクローム E100 | 5,630円 | コダックのリバーサルでは 2018年12月時点で唯一の現行品。 |
白黒フィルム
白黒 | 価格 | 備考 |
フジネオパン100 ACROSII | 1,260円 | 昔ながらの粒子の細かさを 持つフィルム。 |
コダック T-MAX P3200 | 3,510円 | ISO400~ISO12800まで使用可能な モノクロフィルム |
コダック プロフェッショナル T-MAX400 | 3,110円 | 感度が強くセーフライトでの現像が出来ず 完全な暗室が必要。 |
すべて36枚撮りの価格です、現像料金は24枚撮りも36枚撮りも同じなのでそうなると36枚撮りが欲しいですよね。店によって価格も多少変わってきます。
全体的には、富士フイルムは青色や青緑色が強めで、日本人の肌をきれいに再現し、コダックは黄色がかったあたたかみのある色と言われています、欧米の方の白い肌が青白く写らないようにするためだそうです。
発色はかなり好みが分かれるところですね。それぞれの良さが有るので使ってみて好みを探すことになるでしょう。ただし、製造中止で在庫のみになっている種類もおおくこれからは減っていく種類の中から好みを選んでいく格好になります。
現像の楽しみかた
ちょっとオマケで現像の裏話をしますが、興味のある方はのぞいて行ってくださいね。
カメラへのフィルム装填は明るい場所でも大丈夫ですが、巻き取ってカメラから抜いたフィルムはマジックに使うような黒い箱(ブラックボックス)に入れて光が入らぬように横から手を入れ手探りでパトローネ(フィルムの容器)から出して金属のリールに巻き付けます。そのままシェーカーのような容器に入れて上から現像液を注ぎ現像します。フィルムや現像液は全て冷蔵庫で保管していました。
現像液の温度管理も大変で1度変わると現像液につけておく時間も変わってしまいます。夏冬は厳しかった記憶がありますね。
プリントも暗室の中で行います。モノクロは温度がそれほどシビアじゃなくても印画紙に像が見えますので時間で調整できます(コダック プロフェッショナル T-MAX400は全暗室で処理)が、カラーの場合はほぼ見えないような暗い電球を使って作業になりますので、温度と時間は厳守ですね。
カラーの現像液は確か30℃プラスマイナスの誤差が0.5度くらいでしたので夏場などはすぐに温度が上がってしまって露光オーバーになることが多かったものです。撮るだけじゃなくそんな楽しみも当時あったというお話でした。
アプリで再現できないフィルムの味
デジタルに慣れてフィルム写真を全く知らない世代には、少し難しく感じますがフィルム特有の色味や階調というものは、スマホのアプリでフィルム風などと再現されるほど人気があります。
ただしアプリで再現されたものはあくまでデジタル、決してフィルム写真じゃないのでぜひ実際のフィルム写真を撮ってみてプリントしてその階調や柔らかさを実感してもらいたいです。
まとめ
1度のシャッターチャンスはデジタルもフィルムも変わらないものですが、フィルム写真で1枚の大切さを分かっていると、いざという時にもあわてずにシャッターが切れます。
今では高級な趣味になりつつあるフィルム写真。ただそのフィルムもどんどん値段が上がって在庫も減っている状態です。無くなってしまう前に、撮っておきたいですよね。